もっと介護につながりを 「介護の学校 in 八戸学院大学」 熊谷大輔さんインタビュー

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2016.09.01

「介護の学校 in 八戸学院大学」が10月15日(土)に開催!

八戸学院大学(青森県八戸市)は、介護現場で働く人や地域の住民が介護について学べる公開講座「第9回 介護の学校 in 八戸学院大学 ―介護新時代 〜そろそろ、新しい介護の話をしよう〜 」を10月15日(土)に開催します。今回は、「校長」を務める熊谷大輔さんにイベントの目的や介護への想いをインタビューしました。

公開講座「介護の学校 in 八戸学院大学」を運営する熊谷大輔さん

大学講師・熊谷大輔さん
1981年 秋田県生まれ
介護職員や施設管理者、社会福祉士(地域包括支援センター)として介護現場を経験。
現在、青森県の八戸学院大学健康医療学部人間健康学科で講師を務める。

誰でも参加できる地域の「介護の学校」へ

【中浜】「第9回 介護の学校 in 八戸学院大学」について、熊谷さんにお聞きしたいと思います。

【熊谷】よろしくお願いします!

【中浜】これはどのようなイベントなんですか?

【熊谷】これまで、介護現場の方々を中心に講師として招き、講義やグループワークなど、いろいろな形式で公開講座をやってきました。もともとは、介護現場で働く方々が集まって日頃のストレスを発散する場の提供や新たなスキルの獲得、情報共有、さらには横のつながりを作っていただくイベントとして始まったと聞いております。

【中浜】「介護の学校」ということで、4教室×4コマの時間割を組んだ授業形式になっているんですね。

【熊谷】はい!私が校長に就任する前からこのような形式で行われています。今回は全16授業を用意しました。私や学内の先生方、さらには本学に設置されている地域連携研究センターが中心となり、実際に介護の現場で活躍されている方々の中から今回は青森県内全域および岩手県一部を対象に各地域から1名ないし2名の計7名からなる外部委員の方に対し、委嘱状を本学から出させていただき、一緒に運営しています。

【中浜】今年で9回目ですが、毎年続けているのはすごいですよね。

【熊谷】実はこれまでの8回はすべて赤字事業で、8回目でやめようという話がありました。実際のところ、需要と供給のバランスの中で供給の面で事業としてはすでに体力がなくなっていたのでしょうね。どれだけ需要があっても供給することが難しい、資金面というのは実際のところ大きな課題です。しかし、大学の介護に対する理解もあり、大学からの補助で過去8回を乗り切ってきました。福祉や介護=お金の話をすると時に嫌悪感を抱かれる方もいらっしゃると思いますが、事実、何をするにしても、継続を考えるのであれば、なおさら資金は重要な部分を占めていきます。
でも、8回目が終わったあとの懇親会で、とある介護者から「なくさないでください」と声があがったんです。そして、「ここは私たちのよりどころなんです」という言葉を私は聞かされて、先代の校長先生の偉大さも感じつつ、続けることにしたんです。あの声はめちゃくちゃ大きな後押しでしたね。大きな赤字は抱えますけれど…(笑)。

【中浜】そうだったんですか。9回目の今年はどのような「介護の学校」になるんでしょうか?

【熊谷】これまでは介護従事者を中心としていましたが、今回は参加者を限定しません。介護従事者だけじゃなくて、地域住民の方も、学生の方もどなたでも参加できます。大学の地域連携・貢献活動のひとつとして、学びの場を地域住民に提供するため、間口を一気に広げました。

【中浜】今までは介護職のイベントだったのを、地域に住むみんなが参加して介護福祉を知るきっかけづくりの場に変えたんですね。

【熊谷】僕には福祉や介護の事業というのが、いつまでたっても内輪の盛り上がりとして映ることが多くて、実際にその輪の中に入れる人だけの自己満足感みたいなものが心のどこかにありました。でも、福祉や介護って、実はそうではなくて、もっとわけのわからないくらいごちゃごちゃしたものでいいんじゃないの!?って思っているんです。つまり、もともとのパイが大きなところで議論展開が実施されるべきだし、そのパイのなかで新たな創造が生まれ、それが前提で職能団体や身内の集まりってものがより効果を発揮するのではないかなと思っています。ですから、この介護の学校が最初の入り口となるよう講師陣の選び方も変えました。今回は介護現場の方だけでなく、国や自治体といった行政の方、当事者の方にも加わっていただきます。

【中浜】現場と行政が一緒にやるんですね。

【熊谷】現場と行政が別々にやるんじゃなくて、同じ場所でひとつの何かをやり遂げることを意識しました。こういう形は東北では珍しいのかもしれません。

【中浜】これは熊谷さんの提案なんですか?

【熊谷】提案はそうですが、この意見には運営に協力していただいている方や本学の地域連携研究センター、そして外部委員の方の意見もありました。僕は、介護の現場にいたころから、「国は何もわかっていない」とか「現場は何も動かない」とか、そういう言葉がすごく嫌だったんですよ。なぜ、互いに協力できない!?って、ずっと思っていました。それは、難しい議論展開をするより、もっと単純にお互いにお互いを知らないだけだし、もう「みんなごちゃ混ぜでやればいいんじゃないの?」って思っていたんですよ。

公開講座「介護の学校 in 八戸学院大学」を運営する熊谷大輔さん

声をあげられない人が来られる場所になってほしい

【中浜】東北エリアでは、このような介護福祉系のイベントは少ないのでしょうか?

【熊谷】そのように思います。そして、今回は大学が主体的にリカレント教育の一環として実施するわけですから、このような形態は東北エリアの大学を見ても極めて少ないと思います。もちろん、東北、青森でもいろんな活動が活発になってきているのですが、同時に考えるべき課題も見えてきました。これは対人援助と似ていて、何か困りごとや意見がある人が、自分から言ってきてくださる場合は、すぐに支援の手を差し伸べることができます。でも、それを表現できない人は、私たちには見えないところにいて、その支援がとても難しいのです。

【中浜】自分で助けを求められる人はごく一部ということは忘れてはいけませんよね。

【熊谷】そんな声をあげられない人たちが入ってこられるようなイベントにしたいんですよ。例えば家族介護の悩みについて、わざわざ行政機関に相談に行ってくださいということじゃなくて、ぽんっと入ったところで相談できて、解決に向かうような環境になってほしい。そこにも現場時代に相談者から言われた一言があります。僕はその方に、「なぜ、もっと早く相談に来られなかったのですか?」って、今、思うと僕は本当に能力がなかったなと思うのですが、その方は、「相談機関の紹介や利用方法などを言われても、相談に行く者からしてみたら、それ自体、敷居が高いことなんです」って言われました。自分の不甲斐なさと能力の低さに自己嫌悪しましたね。そういうことなんだよなって、だからこそ、イベントの間口を広げたわけですよ。

【中浜】なるほど。本当に助けなきゃいけないのは、そういう情報も知らずに現場で悶々としていて、文句も言いたいけど、どうしようもなくなっている人。そういう人たちが来られる場所にしたいんですね。

【熊谷】そうなんです。

自己満足を打ち破る「新しい介護の話」をしよう

【中浜】今回のサブタイトルの「介護新時代 〜そろそろ、新しい介護の話をしよう〜」とはどういうことでしょうか?

【熊谷】先ほどもお話ししましたが、自己満足で終わっている部分が多いのではないかと私は感じているんです。介護の仕事をしている人もそうだし、いろんな活動をしている人もそう。否定するわけじゃないですが、「○○をやりました」「△△に参加しました」「□□という成果が出ました」というように特定の輪の中だけで終わっている感覚が、自分でもどうしても拭い切れないんです。

【中浜】一時的にやりきったらそれっきり、ということは多いかもしれません。

【熊谷】今回は、自己満足の領域を飛び越えて活動されている方々をできる限り講師に選ぶようにしました。だからこそ、めちゃくちゃおもしろいと思いますよ。今回の介護の学校は(笑)。それと、やり切ったらそれっきりということもすべて否定するつもりはなく、それっきりも必要だとは思います。例えば、あるイベントに参加する→参加したことで自己価値が上がる、つまり参加することがステータスとなって、そこで終わってしまうのは非常にもったいないと思うんです。その過程で得たものを、今度は、周りの人々に伝える方法を個々人が形成すべきだと思いますし、それができるような環境作りは大切だと思っています。

【中浜】今回の講師陣を見ると関東で活躍されている方が多くいらっしゃるんですね。

【熊谷】東北という地域性もあるのかもしれませんが、やはりまだ自分たちでその壁を打破する機会はすごく少ないです。すでにその壁を壊して活動されている方たちは、東京など関東にたくさんおられますが、私たちのところではまず触れることが難しいんですよ。物理的な距離もそうですし、お金もかかりますし。東京の人と青森の人が同じ情報に触れられるということは、今の世の中であっても簡単にはできないんです。ネットで見ればいいじゃないっていうことではない。ネットを介して情報やデータなどを同時に共有する環境と、実際に会って触れることができる環境では、会って触れる環境のほうが圧倒的にその理解度は高い。その場に参加して、空気を感じて、周りの人と話して、それで初めて変わることもあるでしょう。

【中浜】リアルに触れるのは絶対に大事です。それにしてもすごい豪華な講師陣ですよね!

【熊谷】「あぁ、こういう人たちね」って東京の人に言われました。つまり、有名どころを集めただけじゃないかというご指摘なのでしょう(笑)。でも、それは東京の人だから言えることなんですよ。青森の人からしたら、どの方も簡単に会うことはできませんから、それでいいんですよ。

【中浜】まさにそのとおりです。私が東京でお会いする人もいますが、その東京の立場からしても、参加したくなる講師陣です。

公開講座「介護の学校 in 八戸学院大学」を運営する熊谷大輔さん

仲間をみつける・つながる・行動する

【中浜】今まであまり外に出たり、よりどころを見つけたりしたことのない人たちにも、そういう場所を見つけてもらうきっかけになりそうですね。そして、ちょっと火がついている人に「油」を注ぐという機会にもなるんじゃないですかね。熊谷さんは、このイベントを継続していくなかで参加者にどうなっていってほしいですか?

【熊谷】まずは仲間を見つけてつながってほしい。職場や家庭、学校だけじゃなくて、いろんな人とのつながりです。でも、つながるだけで満足するんじゃなくて、つながった結果、自分たちで動いていくようになってもらいたいです。不平不満を言っているなら、まず動いてみようという強さをもってもらえるような機会としての「介護の学校」になればうれしいですね。そして、今の私たちにはまだ見えていないのかもしれないけれど、その中で日々一生懸命に生きて、仕事をして、様々な重圧や責任あるいは自己嫌悪に陥っている人々、この社会の中で生きづらさを感じているすべての人が参加できるような体制を参加者全員で築きたいと思っています。

【中浜】ヨコのつながりを作っていくということですね。

【熊谷】私たちはひとりでは生きていけません。少なくとも僕は絶対に一人では生きていけません。自分がもうダメだと思ったときに、ふっと思い出せるような人を増やしていく。これはすごく大事なことです。ただ、ヨコのつながりだけじゃダメかな、とも思っています。

【中浜】ヨコだけじゃなくてタテのつながりですか?

【熊谷】タテというのは、まずは現場と行政のことです。ここがつながらないと、さっきも言っていたように、現場がどうとか、行政がどうとか、ぜんぜん噛み合わないままです。そこにタテの線を加えることで、「そうか、現場がああなっていて、国はこうなっているんだな」と総合的に広く考えられる人になれるんです。真っ向から勝負するなんてことではなく、協力すればいいんじゃないっていう方向ですよ。近年、「他職種連携」っていう言葉が呪文のようにまだ叫ばれているじゃないですか。でも、それって、福祉や介護、医療職など、限定された者同士の連携では本来ないような気がします。僕がイメージする連携っていうのはまさに全職種、全人類なんですよ。

【中浜】以前、介護人材が足りないと感じている介護職員にアンケートをとっている方にお話を聞いたことがあります。すると、7割の職員は何も行動していないんです。人が足りないと言っているけど、結局、自分はそのために何もしていない。例えば、離職させないために環境をよくしましょうと言うと、それは事務の仕事でしょ、施設長の仕事でしょ、って返ってきます。でも、そこは職場が一緒にならないと人はどんどん抜けるし、入ってきた人も定着しません。これって、広く見れば、現場と行政という対立と似ていますよね。それぞれ役割は違うけど、熊谷さんの言うとおり、敵じゃなくて仲間なんですよね。

【熊谷】そのことに気づけば、どんどん強くなってもらえると思います。

【中浜】タテとヨコで仲間を見つけて、つながって、一緒に協力して行動していく。こうしたビジョンが熊谷さん、そして「介護の学校」にはあるんですね!

【熊谷】介護とは常に開かれたものであってほしいんです。一生懸命やる人がいて、それを見守る人がいて、まったく興味関心のない人がいる。それはそれでいいとしても、すべての人、社会全体に開かれた入り口の端から端までが、もはやない、そんな介護になってほしいですね。そして、それが普通になる社会を構築する方法のひとつに、この介護の学校というものが存在してほしい、僕たちが作っている介護の学校というものはそういうものなんです。

【中浜】最後は熱い想いも聞くことができましたね。ありがとうございました!

【第9回 介護の学校in八戸学院大学】のご案内

<開催概要>

  • 日程:2016年10月15日(土)
  • 時間:8:50〜18:00
  • テーマ:介護新時代 〜そろそろ、新しい介護の話をしよう〜
  • 対象:介護福祉医療従事者 一般市民 学生
  • 会場:八戸学院大学
  • 参加費:一般3000円(弁当+600円)、学生は無料 ※懇親会別途

詳細、お申し込みは下記のFacebookページをご確認ください

https://www.facebook.com/events/1804908816411685/

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中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/