発達障害の人の能力を活かせる社会をつくりたい!GIFTED AGENT代表 河崎純真さんインタビュー

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2016.09.26

大人の発達障害者向けのプログラミング・デザインスクールを開校

2016年8月に大人の発達障害者向けのプログラミング・デザインスクール「GIFTED ACADEMY」を開校した、GIFTED AGENT代表の河崎純真さんにインタビューしました。

GIFTED AGENT代表の河崎純真さん

GIFTED AGENT代表取締役社長・河崎純真さん
1991年10月生まれ
慶應義塾大学在学中
高校には進まず、15歳からエンジニアとして働き始め、多くのITベンチャーの立ち上げに創業メンバーや役員として関わる。アスペルガー症候群と診断された母親の存在がきっかけとなり、2014年、GIFTED AGENTを設立する

GIFTED ACADEMY:http://gifted.academy

15年前、母親が発達障害と診断される

【中浜】簡単に自己紹介をお願いします。

【河崎】河崎純真(かわさきじゅん)といいます。高校には行かず、15歳からエンジニアとして働いています。同時にバックパッカーもしていました。16歳のときに大検(高等学校卒業程度認定試験)を取得し、高校3年間を1日に圧縮しました(笑)。朝入学して、夕方卒業ですね。17歳のときにエンジニアとしてスタートアップに参画しました。それから国内外を含めて創業・新規事業で20社くらい、創業メンバー、役員メンバーとして6社ほど関わりました。

【中浜】へぇ、すごいですね。

【河崎】その6社目が、今の会社(GIFTED AGENT)で、2014年6月につくりました。最初、発達障害に興味のあるメンバーで事業をやろうということになって。

【中浜】どうして発達障害に興味を持ったんですか?

【河崎】母が発達障害なんですよ。15年前、私が小学3年生の時に診断が出ました。当時、発達障害の特性からか母が国内外に出ていた発達障害に関する本をバーっと買い集めて、家に本が大量にありました。本棚ひとつ分くらい。それを読んでいたので、発達障害について興味、関心がありました。

【中浜】お母さんは遅い段階で診断が出たんですね。なぜ15年前に診断を?

【河崎】それは、行動に問題があったからですね。

【中浜】ちょっと病院に行こうかって?

【河崎】そうです。母は得意なことは得意なのですが、苦手なことはものすごく苦手でした。ちなみに得意なことは絵を描くことと、子育てだけです(笑)。炊事、家事、洗濯はまるでダメで近所付き合いも苦手、お金の管理も苦手。また、アスペルガーの特徴で字面通りに物事を受け取るため人を信じやすく、自分が生まれたときは家に3千万円ほどの借金ができちゃって、生活に苦労しました。ガチ、貧乏でしたよ。山に山菜をとりに行って、それを食べることもありました。美味しかったんですけど。

【中浜】大変だったんですね。

【河崎】ただ、母はアニメーターとしてはかなり優秀なんです。アニメプロダクションの会社で働いていて、一時期、『カリオストロの城』などをやっていました。

【中浜】それは驚きました。

【河崎】15歳で社会に出るまで、私の家庭が特殊なのかなと思っていたんですが、意外とそうでもなかったんです。発達障害の人って、めっちゃいるなって気づいた。それで、発達障害の人ってすごい能力を持っているのに、その能力が活かされていないのはもったいないって思いました。それが発達障害の人たちが活躍できる場をつくりたいと考えた経緯ですね。それからずっと発達障害には関わっていたのですが、2年ほど前に会社をつくり、最近はライフワークとして50年以上取り組んでいく覚悟を持ちました。

発達障害の人の能力が活かされないのはもったいない

【中浜】実際に、今はどういうことをされているんですか?

【河崎】GIFTED AGENTという会社で大人の発達障害に特化した、プログラミング・デザイン教育と企業への人材紹介をやっています。私たちのビジョンは、「偏りを活かせる社会を創る」ということです。本当は、すばらしい能力を持っているのに、社会の枠組みの問題でその能力を活かせていないという人がたくさんいる。その最たる例が発達障害だと考えています。

【中浜】「偏り」ですか。

【河崎】いわゆる普通の人は、能力がまんべんなく広がっているのに対して、発達障害の人は能力の偏りが激しい。たとえば、知識、数唱、算数の理解はものすごく高いのに、単語だけが壊滅的にできないというような。

【中浜】そうですね。

【河崎】ただ、海外だとアスペルガー症候群などの発達障害は能力なんじゃないかっていう話があります。PayPalを起業し、Facebookにも投資したピーター・ティールは「成功した創業者にはアスペルガー症候群の人が多い」とインタビューで語っています。同じインタビューで彼は「”MBA的な起業”はあまり好きじゃない。予測できることしかやらないから」とも語っています。彼はクレイジーな起業が好き。つまり、アスペルガー症候群の人は起業に向いているのではないかということですね。

【中浜】アスペルガー症候群などの発達障害の人が起業に向いている理由はなんでしょうか?

【河崎】信念を曲げないからです。自分が正しいと信じたことがあれば、絶対に諦めない。そして執着心が強いことも理由です。自分が納得するまで集中して打ち込む。周りがやめろと言ってもやめないし、徹底的にやり続ける。
実際にプログラミングを教えていて、おもしろい人がいました。本人から聞いた話なのですが、京都大学の先生がその子に数学を教えていたとき、「この問題、解けるかわかんないね」って、4次関数の問題を出しました。本当に解けるかわからないんですけど、その子は「解ける」と信じて一日ずっとその問題を解き続けて、解けたそうです。

【中浜】すごい。

【河崎】解けるかどうかわからないし、解けないこともあるわけですよ。一日やっても一カ月やっても解けない問題もある。でも、その子は解けると信じてひたすら解を求め続けたから解けた。そういうところに、発達障害の人が起業に向いている理由があります。

【中浜】なるほど。

GIFTED ACADEMYを開校させた河崎純真さん

私たちは"四角いスイカ”...社会の枠組みとマッチしない発達障害

【河崎】ただ、米国の統計では、発達障害の診断と障害者認定を受けた人のうち、約8割がフルタイムの仕事に就けていないそうです。これはもったいない。

【中浜】どうして就労率が低いのでしょうか。

【河崎】社会の枠組みと能力がマッチしていないからだと考えています。たとえば、四角いスイカの作り方を知っていますか?

【中浜】あ、これ知っています。四角い枠にはめるんですよね。

【河崎】大正解です。四角いスイカの作り方。まさにこれが社会です。私たち人間は、社会という”四角い枠”によって、扱いやすい”四角いスイカ”に育てられている。9:00に出社しなければいけない、土日に休まなければいけない。周囲と協調できなければいけない。それで、発達障害の人はその枠に収まらないんだと思うんです。劣っているのではなくて社会の枠組みに適していない。

【中浜】だいたいの”スイカ”は四角く収まるけれど、やっぱり枠から出てきちゃうのもあるんですね。

【河崎】はい。でも、そもそも本当のスイカって楕円に育つわけですよね。

【中浜】社会の枠組みがガチガチというだけですね。

【河崎】こういう社会を変えることはできません。絶対に不可能だと思っています。

【中浜】というと?

【河崎】あらゆる問題が循環参照していて、複雑に絡み合っているからです。発達障害の問題は何なのか?教育なのか医療なのか、家庭なのか政治なのか。どれを取っても、何を変えるにしても、それぞれ互いに依存していて、もはや変えることはできません。たとえ変えられたとしても、50年はかかると思います。50年かけて1回、ちょっとした変更を加えても、PDCAサイクルが長すぎて何も検証できない。

【中浜】では、どうするのか...。

社会を「変える」のではなく、社会を「創る」

【河崎】偏りを活かせる社会を実現するために私たちが行うアプローチは、「社会を創る」ということです。すなわち社会構造、経済圏をつくります。エンジニアリングの世界では、こういったことはよく行います。古いシステムがあったとき、リファクタリングという手法で改修が間に合わない場合、スクラップ・アンド・ビルドでゼロからつくるということをやる。だいたいはスクラップ・アンド・ビルドでやる方が速いし、効率的だし楽なんですよ。

【中浜】ゼロからですか。

【河崎】今の社会は”Windows95”だと思っています。要するにとても古いOSなんですよね。時代が変化して、新しいパラダイムや、良いアプリケーション、ソフトウェアがいっぱい生まれているのに、OSが古いせいで動かない。いくら古いOSを改修しても、“Windows95.H28”みたいな話にしかならないんです。

【中浜】新しい社会のOSをつくるわけですね。

【河崎】そうです。実際に衣食住、金融、育児・介護を含む独自経済圏をつくろうとしています。これは実際にトヨタ自動車が似たような規模のことをやっています。病院、学校、住宅、工場などの生活に必要なものをすべて「トヨタ」が提供しています。

【中浜】それで、GIFTED AGENTのお話でもあったように、まずは教育・就労から始めるんですね。

【河崎】GIFTED ACADEMYというプログラミング・デザインスクール事業です。渋谷駅徒歩1分のところに教室をつくりました。国の認可を受けた指定就労移行支援施設です。目をつけたのは「5万社30万人」という数字。これは障害者雇用義務を達成できていない従業員100人以上の企業と雇用すべき人材の数です。まだ埋まっていない大きな需要があるので、生徒に教育して企業に紹介することで、この問題を解決しようとしています。

【中浜】生徒に対してはどうでしょうか?

【河崎】本気で取り組む人に世界中で活躍できるエンジニアリングデザイン、そして英語の知識と実務経験を習得してもらいます。「一人ひとりが自分の役割を見つけ、自分に自信を持ち、他者に対する信頼を見つけてもらうことで、不安のない人生を送る機会を提供する」というのがGIFTED ACADEMYの役割です。

【中浜】英語も学べるんですか?

【河崎】はい。エンジニア、デザイン技術は英語が1次情報なので、英語を読む能力が必要です。

【中浜】日本でも?

【河崎】そうです。エンジニアにはたくさん種類がありますが、私たちが育てるのは知的労働者としてのITエンジニアです。“肉体労働”に近いイメージが思い浮かぶようなエンジニアではありません。社会で通用するプログラミング・デザインの技術を学ぶんです。

【中浜】そもそもなぜプログラミング・デザインなんでしょうか?

【河崎】いま非常に需要があり、年収レベルも上がっていて、ほかの職業と比べても技術さえあれば安定して稼げるからです。今後、人間じゃなくてもできる単純作業は、AI(人工知能)やロボットに代わっていきますが、そんな時代でも複雑な情報設計が求められるITエンジニアリングっていうのはまだ置き換えが難しい領域だと言われています。

【中浜】長く働き続けられる見込みがあるということですね。

技術の習得よりも、自己理解と心身の健康を大切する

【河崎】ただ、発達障害を抱えながら社会で不安なく働き続けるには、「心技体」の考え方が欠かせません。例えば物事の考え方、定義付けです。私たちは、発達障害というのは脳の機能発達の差異であり、身体に差異があるように脳にも差異がある、と考えています。

【中浜】それは、発達障害を抱える生徒自身が、自分がどういう人間なのかを知るということですか?

【河崎】その通りです。自分を理解することで、自分を受け入れることができます。ある意味では、「諦める」ということにもなります。たとえば、身長140cmの人はバスケットボールで“スラムダンク”はできませんよね。できないことをできないと知ること、「諦める」のはとても大事です。でも、これは別にバスケ自体を辞めろと言っているわけではありません。身長160cm台でもNBAで活躍している日本人選手もいますよね。無理にジャンプ力の練習をするんじゃなくて、パスとかドリブルとかを練習しようよっていう話。やれないことを努力するんじゃなくて、やれることを努力するんです。
自閉症の人にコミュニケーションの訓練を行うのは「目が見えない人に前を見て歩け」と言っているのと同じだと考えています。できるかもしれませんが、それができるようになるには並大抵ではない努力が必要です。

【中浜】自分の弱いところと強いところをはっきりさせて、その強みで勝負しよう、と。

【河崎】そして私は「心身同一」だと思っています。心は体がつくっている。体が健康な人は、心も健康です。なので、体の健康を大事にしていきたいんです。体の健康といっても、単純に筋肉ムキムキということではありませんよ。

【中浜】その心身の健康に対して、GIFTED ACADEMYではどのようなことをされているんですか?

【河崎】マインドフルネス(自分の心身の状態に気づくための心理療法)として、フェルデンクライスなどのボディワークをやっています。その目的はボディ・イメージを持って、自分をコントロールすることです。それによって自信が生まれます。

【中浜】コントロールですか。

【河崎】人ってあんまり自分の体をコントロールできていないんです。例えば朝起きたときに、肩が重いと感じる。そのとき、なぜ重いのか?普段、肩が重くない日はどのくらい重くないのか。自分の正しいボディ・イメージを持っていないと、なぜ体の調子が悪いのか、原因を見つけられません。

【中浜】なぜヨガや体操ではなく、フェルデンクライスなんですか?

【河崎】ヨガや体操はボディ・イメージを持つことを目的にしていないからです。それだと健康にはなりません。なぜ自分の調子がいいのか悪いのか、明確に理由付けできるようにならないと、正しいボディ・イメージを持てるようにならないと、体をコントロールすることはできないのです。

【中浜】自分の体がどう動いているのかを認識しながら。

【河崎】そうです。自分の体をコントロールできるようになると、自然と自信もつくし、人間がどういうものかがわかってくる。他者への信頼にもつながります。

【中浜】心身の健康を大切にされていることがよくわかります。

意欲ある人に機会と場所を提供する

【河崎】エンジニアリング、デザイン、医療などの実際の現場で活躍してきた10人ほどの講師陣がいますが、やはり大事なのは心、マインドだと言っています。自分自身を受け入れて、他者を信頼して、その上で自分が何かに打ち込みたいっていう強い気持ちがないとだめです。馬を水飲み場に連れていくことはできますが、水を飲ませることはできません。どんなに良い環境で、どんなに周りがフォローアップしても、本人にその意欲がないと意味がないということですね。

【中浜】無理にやらせるわけではないんですね。

【河崎】過去2年ほどの間で30人ほどの発達障害の人に携わりましたが、本人から生まれる意欲がないとまったく意味がなかった。周囲が、この人が「こういうふうになるように」とモチベーションを上げていくことは本質的に意味がありませんでした。なので「発達障害支援」をすることはやめました。今やろうとしていることは、機会を与えること。意欲ある人に機会と場所と必要なものを提供するけど、私たちはそれしかやりません。

【中浜】能力があるかないかじゃなくて、やる気があるかないか。

【河崎】そうです。発達障害を抱えながらも、やる気のある人に来てほしい。そもそも私は万人を救えるとは思っていませんし、万人を救いたいとも思っていません。あくまで自分が関わっていける、私たちと一緒に「偏りを活かせる社会を創っていきたい」と感じる、そんな意欲のある人にとって、その能力を活かせる機会と場になればいいなと思っています。もちろん、モチベーションを維持する環境も用意しています。
自分のやりたいことを設定し、社会における使命・役割を認識し、そのために守る信念、優先順位は何かを一緒に考えていきます。後悔しない生き方をするためのサポートです。

【中浜】なんていうか、プログラミングやデザインの教育というよりも、一人ひとりがどうあるべきか、どうありたいか、自分自身と向き合うということにウエイトを置いているんですね。

【河崎】そうですね。プログラミングをやるのは、今の時代にニーズがあるというだけで、目的ではありません。もっといいものがあればそっちに変えます。

【中浜】いろんな障害があっても、その人がその人らしく生きていく環境づくりをしていくなかで、働きやすいだろうとか特性に合っているだろうというひとつのピースがプログラミングということなんですね。

【河崎】はい。まずは教育・就労から始めて、「偏りが活かせる社会」をゴールに目指していきます。
生徒もまだ募集しているので、入学説明会、事前面談にぜひいらしてください。

GIFTED ACADEMY:http://gifted.academy

GIFTED AGENT代表の河崎純真さん(左)と中浜崇之が話しました

編集者の一言

自分自身の経験をもとに一人ひとりの強みに目を向け、それらを活かしていく。自分が認めてもらえる自分になれるチャンスを広げる新しい取り組みだと感じました。ご興味のある方は、スタートした今だからこそチャレンジしてみてはいかがでしょうか。河崎さんありがとうございました!

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寄稿者

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中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/