子どもから高齢者まで、将棋を通じて新しい可能性をひらく 「いっぽ どうぶつしょうぎを育てる会」 代表 藤田麻衣子さんインタビュー

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2017.02.09
どうぶつしょうぎを教える元女流棋士・藤田麻衣子

「どうぶつしょうぎ」を知っていますか?小さな盤面にかわいい絵柄ですが本物の将棋と変わらない楽しさや奥深さを秘めています。元女流棋士で現在は「いっぽ どうぶつしょうぎを育てる会」の代表を務め、子どもから高齢者までどうぶつしょうぎを広める活動をする藤田麻衣子さんにお話を伺いました!

はじまりは女流棋士の経験から

【中浜】簡単に自己紹介をお願いします。

【藤田】「いっぽ どうぶつしょうぎを育てる会」代表の藤田麻衣子と申します。以前は将棋の女流棋士でした。将棋をもっと簡単にわかりやすくした「どうぶつしょうぎ」のデザインとイラストの担当です。現在はどうぶつしょうぎの良さを全国に伝える活動をやっています。

【中浜】もともと将棋の女流棋士だったんですね。なぜ、将棋ではなくどうぶつしょうぎの普及活動をしているのでしょうか?

【藤田】当初は将棋そのものを人に伝えようとしていたんです。ただ、漢字で書かれた駒って男の人のもの、難しいものという固定観念が強かったので、なかなかやる人が少なくなっていました。また、当時自分の子どもが小さかったのですが、子どももお母さんも楽しめるおもちゃや遊びが世にたくさんあるなかで、将棋に入っていく人はいるのだろうかと。そこで、お母さんと子どもが簡単に2人で始められるものが欲しいなと思い、どうぶつしょうぎを作りました。
子どもがキャラクターもののおもちゃで遊んでいたので、駒にキャラクターを割り当てて強さや特徴を表せないかなと思って、じゃあ動物でいこうと。王様は百獣の王でライオン、大きな駒はキリンとゾウにしたり、小さくて小回りの効く駒は猫にしてみたり、そういうイメージでデザインしました。そうしたら、見た目が変わっただけなのにお母さんたちが手に取ってくれたんです。すごく反応がよかったのでびっくりしました。

【中浜】もともとイラストは好きだったんですか?

【藤田】そういうわけではなかったんですよね。もともと将棋界のイメージを変えたいと思って、チラシやホームページを作ったりしていたのですが、その延長で自分で作ってしまいました。

将棋で得られる喜びや成長を、どうぶつしょうぎでも

【中浜】女流棋士はどれくらいの間やっていたのですか?

【藤田】23歳から13年ぐらいです。あまり芽が出なかったので、裏方の仕事ばかりやっていましたね(笑)。どうぶつしょうぎの出発は将棋の普及だったのですが、いろいろな場面で受け入れられて活躍するようになりました。今では、どうぶつしょうぎそのものを伝える活動もかなりやっています。100人やってくれたなかで、2,3人ぐらい将棋につながってくれれば良いというように考えていて、将棋が強い人を増やそうという目的ではないんです。将棋によって得られる喜びや成長できることを伝えられればいいなと。

【中浜】ちなみに将棋の魅力ってなんですか?

【藤田】大きく3つあって、1つめはコミュニケーションツールになることです。ルールを知っていれば初対面でも将棋を通して遊べるんです。あと、将棋や囲碁って基本的に黙っているんですよ。ところが黙っていも、相手が次に何をするかを自分で感じて読んだり察したり探りあったりするんです。それを「棋は対話」といって、黙っていても国籍や男女、年齢差関係なく対話ができる。それって素晴らしいことだと思っています。あと、学校の勉強と違うのは、脱落しないところです。最初にルールを覚えてしまえば、名人が何をやっているかその人なりに感じることができるんですよ。新たに覚えることはルール以上にはなくて、それを覚えたら自分なりの感想をみんなが抱けることが魅力ですね。
もうひとつは、運が関係ないのですべて自分が責任を引き受けることができることです。誰も助けてくれない。自分ですべてを決めないといけない。世の中にそういう場面ってあまりないと思います。対局をしていると本当に誰も頼れないんです。自分で全てを決断することで成功したときの達成感、失敗したときの悔しさ、そういった凝縮した感情を味わえます。
3つめは、答えが1つではないところです。勝つためにはどういう道を辿ってもいいんです。自分で責任を持つかわりに自由なんですよね。戦法や戦術を自分で選べたり。同じ勝つための道でもその人らしさが出ます。自己表現ができるのもいいところですね。

【中浜】僕は3年ぐらい前に今働いているデイサービスに来ている認知症のおじいちゃんに教えてもらいました。とても強くて、なかなか勝たせてもらえませんでした(笑)。それ以前は、やっぱり難しそうだからという理由でなかなか近づかなかったのですが、やってみると面白かったです。そして今回、藤田さんからどうぶつしょうぎの話を聞いて、興味深いなあと。

【藤田】どうぶつしょうぎにもそういった将棋のエッセンスは含まれていて、ほどよい難しさと手応えがあるところが面白いと思います。

将棋をやったことがない子どもからお年寄りまで

高齢者も子どももできるどうぶつしょうぎ

【中浜】今はどういった場にどうぶつしょうぎを持ち込んでいるのですか?

【藤田】文化センターや地域の公園でのお祭りだとか、人が多く集まるようなところにブースを出しています。加えて、学校や保育園など、今までコミュニティとして出来上がっている場所です。そういった場所でやることの良いところは、普段目立たない子がどうぶつしょうぎをやると潜在能力を発揮できたりするんですよね。かくれた個性を引き出すきっかけになります。あとは、どうぶつしょうぎを家庭でやって好きな子も家の中だけだと飽きちゃうと思うので、その子たちが目標にできる大会を開いています。基本的に子ども向けが多いのですが、高齢者施設でも指導しています。高齢者施設では将棋を教えているのですが、はじめはどうぶつしょうぎから学んでもらっています。

高齢者施設でお年寄りがどうぶつしょうぎを楽しんでいる様子

【中浜】高齢者にも教えているのですか?

【藤田】はい。60歳以上限定の女性将棋教室というのをやっていて、上は80代くらいの方も来ていますね。主人や父はやっていたけど、自分は初めてという人が来るので、どうぶつしょうぎからはじめるんです。
みなさんに受講理由をお聞きするのですが、一番多いのが家族と指したかったからなんですね。もうひとつは脳トレがしたいという理由です。現代って物を書いたり、手先を動かすことって年々減っていると思います。どうぶつしょうぎや将棋は五感全てを刺激できるんです。手で駒を触ったり、駒を打ったときの音を感じたり、そういうこともいいなと。実際にやってもらうとどうぶつしょうぎを自然なかたちで受け入れてくれますね。
将棋って対局が終わったあとに、感想戦といって相手と一緒に反省会をするんです。それがまた良いところで、そこはあの手がよかったとか、この手がまずかったとか言い合うんです。対局中は黙っていたのに、その場では言葉に出してコミュニケーションを取るという。勝者は敗者を気遣ったり、敗者は勝者を讃えたりできる。大人の女性がやると、一局の対局だけではなくて終わったあとも、自然と感想戦が沸き起こるんです。それもまたいいなと。

高齢者施設でのどうぶつしょうぎを使った感想戦

【中浜】そういったことも含めて、コミュニケーションツールなんですね。

【藤田】そうですね。最近は、ご高齢の方でも一般の大会に出られた方がいます。習いに来るまででも大変なのに、電車を乗り継いで違う土地に大会で出向くことはすごいと思います。大会に出た方からは、会場が若い人たちばかりなのでびっくりしたと言われます(笑)。彼女たちを見ていると習うことに早いも遅いもないんだなと気付かされますね。

【中浜】はじめは家族とやるため脳トレのために習っていたものがだんだんと楽しさが先行していくからこそ続くのかもしれません。どうぶつしょうぎから入れば、将棋もどなたにとっても始めやすいし続けやすいものなんですね。

【藤田】一人では続けづらくても、周りに仲間がいると途端に楽しくなるみたいです。どうぶつしょうぎそのものの楽しさもあるし、それを通じて生まれるコミュニケーションを含めて楽しいんだと思います。将棋って同じ局面はないんです。人が違うと個性と個性のぶつかり合いで違うものが生まれるので、飽きないしそこが将棋の面白さです。単にある人と会話してくださいというよりも自然に一緒の時間を過ごせるんです。

どうぶつしょうぎを文化として根付かせたい

どうぶつしょうぎを文化として根付かせる

【中浜】いまは普及活動がメインのようですが、今後はどういった活動をしていきたいですか?

【藤田】今後は、どうぶつしょうぎを使ったコラボ展開を考えています。「どうぶつしょうぎカフェ いっぷく」というカフェを開いたのですが、どうぶつしょうぎができる場をつくっていくのもその一環です。あとは、教える人を増やす活動もしっかりやっていきたいと思っています。

【中浜】どうぶつしょうぎを広めていった先にどんな世界が待っているのですか?

【藤田】囲碁とか将棋って文化として根付いているんですよね。全国の市区町村で教える活動をしている人がいて、その上にプロ団体もある。すごく裾野が広いんです。どうぶつしょうぎは子どもたちの中では知っている子は多いけど、まだ教える人は少ないんです。そうすると一過性のものになってしまう。だから、誰もがこれを伝えられる世界にしたいですし、文化として根付いてほしいですね。私は将棋の持っている良さに救われた部分があるので、子どもたちにもどうぶつしょうぎが広がればいいなと。最近だと、子どもたちからおばあちゃんやお母さんに伝わることもあるようです。そういうのも含めて、長い目でどうぶつしょうぎを広めていきたいですね。

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寄稿者

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中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/