インタビュー

乗りたい車を福祉車両にカスタマイズ!障がいだからといって諦めない 株式会社ファイブスター代表取締役 上杉隆昭さんインタビュー

「誰でもが好きな車に乗りたい」そんな当たり前のようなことが当たり前じゃないという事実。 贅沢とかそうじゃなくて、元気でいたい理由やリハビリを頑張る理由が自分らしい姿の継続につながることが、本当の目的であり目標だと改めて思いました。いつまでも自由に自分の好きなように選べることが1つずつ増えていくといいですね!!

好きな車を福祉車両にカスタマイズする上杉隆昭さん

クルマ社会の山梨で福祉車両への改造を提案。

【中浜】まず自己紹介をお願いします。

【上杉】株式会社ファイブスター代表取締役の上杉隆昭です。僕らは福祉車両を展開している会社です。通常、福祉車両というとすでに機能が取り付けられたものをお客様に乗ってもらうことが一般的ですが、僕達はその逆で、お客様のニーズに合わせて必要なものだけを取り付け、あとからお客様が扱いやすい車を展開することを軸にしながら販売を行っています。

父の事故で気付かされた福祉車両の必要性。

【中浜】そもそもなぜ福祉車両というものに目をつけたんですか?

【上杉】目をつけたというか、必要になってしまったんです。僕の家系は乗り物屋さんからスタートして、100年くらい続いています。これまでは別の会社で車屋さんをずっとやっていまして、僕は4代目にあたります。3代目の父が輸入車を展開していたんですけれども2012年に交通事故に遭い、命が危ないという状況に陥り、当時海外にいた僕はソッコーで帰ってきました。
その後、ずっと付き添って病院の中で会話をしていましたが、退院後に車が必要だということは最後の最後まで分かりませんでした。ケアマネさんたちからは引越しをする際の部屋のリフォームやリハビリについて助言されたが、移動の手段の説明がなく、幸いにも命は助かったのでいざ退院の際に介護タクシーの手続きをしようとしたとき、介護タクシーは病院に通うためだけにしか使えないということを知りました。「じゃあどうやって生活するのこの人達は!?」と思いつつ慌てて探し始めました(笑)。
しかし、当時山梨県内で福祉車両をやっているところは少なく、お店で福祉車両がほしいといってもカタログしか見せてもらえなくて、使い方を聞くと横浜のショールームに行ってくださいと言われたりしました。福祉車両を買おうと思うもデモカーはないし、頼んでも3ヶ月とか待たなきゃいけない。でも明日から車が必要だという状況で、ネットで探したところ、「オフィス清水」という会社に出会いました。この会社ではどんな車でも自分が必要なものがつけられるなんて書いてあったのでMINIの車に父を介護するセットをつけたいという連絡をし、実際につけてもらって今現在もその車を使っています。このように、自分の身内に起こったハプニングからスタートしたというのが私の出会い、そしてはじまりです。

通常の車両に「オプション」としての機能。

【中浜】いままでは福祉車両というと、バックドアから車椅子が乗れるということがたぶんメインで、かなり限定された種類しかなかったと思います。そこでなぜオプションという視点は今まで日本になかったのでしょうか。

【上杉】難しいですよね。僕もなんでかなぁ?と本当に思うんだけど、やっぱり国産車のメーカーの強さはあると思います。また、ハンディキャッパー向けの製品のメーカーさんも存在しているのですが、製品のラインナップや販売条件などの限定があったり、色々な大人の事情やしがらみがあってなかなか普及に至らなかったのでしょう。
東京にあるオフィス清水を中心に全国にパートナー会社があります。取付側とお客様の距離が近くなり「ちょっと待てば取付けてくれる」、「ちょっと待てば直しや調整をしてくれる」、「ちょっと待てばメンテナンスをしてくれる」といったことが少しづつ分かって頂け、最近の普及につながっているかなぁと思います。

【中浜】今回、その「オプション」という視点でみたとき、今までの一般的な福祉車両との大きな違いは選択してつけられることと選択して外せるということですよね。この「外せる」ということがとても重要になってくると思います。車単体としての価値はもちろん、福祉車両の中古車って難しいところがありますよね。

【上杉】まだマーケットが無いので、中古車情報サイトで福祉車両を探しても一部しか出てこなかったり、それも購入時の価格は相当な金額だったかもしれませんが二束三文で買い取られて販売されていたりします。患者さんの容態によって全然仕様が違うわけだから正直仕方ないですけどね。そこで使いやすさを考えるとオーダーメイドにたどり着きます。車屋さんをやっているとよく分かりますが、ほしい機能をあと付けでき、元の形に戻せるのは、車の価値を落とさないでできるのがウリです。
特にうちの会社ではあと付けしたものが必要でなくなったら買取という形で対応する場合もあります。例えば取付けにした回転シートが、ご事情により不要となった場合などです。そうなると、今度は中古品が発生するので高額なパーツを買えない方や申請がなかなか下りない方に対しても安価で提供できるようになりますよね。このようなことがどんどん繰り返されることでより普及しやすくなって、介護をしている方の疲れも少しずつ軽減されたり、外へ出る気力がでたりといったところに全部リンクしているのではないかと思います。

【中浜】まず、福祉をやっている誰もがMINIを福祉車両にできるオプションがあるって想像すらしていないですよね。福祉車両といったらみんなイメージするものはだいたい同じもので、障がいを持っていても年齢を重ねて身体が不自由になっても乗りたい車を諦めさせないというのが驚きです。

【上杉】自分でもあまりピンとこないんですけど、もう当たり前になってしまっているので。でも、もしかしたらその話が今日みなさんに一番嬉しいことなのかもしれません。「これも福祉車両になりますよ、あれも福祉車両になりますよ」ということが、みなさんの喜びに変わってくるということは嬉しいです。

【中浜】それはとても夢があると思います。日本車だろうが外車だろうがやっぱり「本当はこの形が好きだけど、自分にはこれしかない」というのがひとつ外れるだけで喜びに繋がりますよね。

MINIを福祉車両にすることができる

自立するということは、ひとりになれるということ。自分の世界を切り開いていく人たちにもっともっとエンジョイしてほしい。

自身が運転する喜びを重視することについて語る上杉隆昭さん

【中浜】もうひとつ、僕がイメージする福祉車両と違うなと思うのは、運転する人の視点がすごく強い気がするんです。福祉車両はどちらかというと「乗せてもらう」というイメージが強くて。車屋さんだからなのかもしれませんが、運転する喜びを大事にされているんじゃないかなと思います。

【上杉】誰もが自立したいという気持ちを持っていると思うんですよね。容態の話や病気の話、ハンディキャップを持つ色んな方々がいらっしゃる中で、一番心の中で思っていることが「自立」。健常者の僕らでも自立という言葉は結構使われていてプレッシャーにもなっていますが、僕はそこがキーだと感じていて、なるべく自身で運転ができること、移動ができることが、その人たちの幸せになれるかな、と。まあ、堅い言葉でいうとその方の自尊心や尊厳を重要視する事でしょうか。
この間の展示会でも車椅子の娘さんを持つお父様がいらっしゃって、2-3年くらい前から娘さんが車に乗るのをやめてしまったという話をしていて。それまでは自分が乗りたい車に乗りたいと言って自分でお金を貯めて買ったけれど、進行性の病気でどんどん車に乗れなくなって、諦めて車を手放したそうです。そのタイミングで東京パラリンピックの選手としての選考に入ることができ彼女が集中できるようになったから良かったかなという話をしつつ、でもやっぱり車に乗れたら移動がもっとできるようになれるしもっと自由になれるし、もうちょっと前に会っていれば、と言われました。これはもう完全に運命だからそんなこと言わないで、また諦めないでチャレンジしてほしいと娘さんに伝えてほしいという話をしたんですね。そしたらだんだん彼が深い話しをし始めて、もう泣くからやめてくれみたいな話しをたくさんされました(笑)。その中で一番心に残ったのが、彼女たちは介助されることが多いから、ひとりになりたいんだって。で、車の中というのは一番ひとりになれる時間、そして一番好きな時間だそうです。どんな人でも、どんな状況でも、ひとりになれるというのはすごく重要です。これがすなわち自立みたいなものだと思っていて、これは深いなと思いました。そういうことを実際目の前で話されると、頑張って皆運転してほしいなという気持ちにはなりますね。

【中浜】ひとりになれる時間って確かにいいですね。

【上杉】本当にいい出会いができました。僕もそれを聞いて、最後にあなたに出会えてよかったですなんていったらお父さん泣きながら帰っちゃって(笑)、ここ展示会だよ!?みたいな(笑)。でも本当にいい話がきけてよかったなと思いました。

【中浜】やはり自分で運転できるとか、乗りたい車に乗れるとか、すごくモチベーションに繋がるじゃないですか。それがやっぱり生きる力にもなるし、歳をとろうが病気が進行しようが可能であるということがすごいですね。

【上杉】そうですね。みなさん色んなこと考えていて、今まで行けた場所が最近いけなくなっちゃって…みたいなことをさらっというんですよね。それを聞くとそこにもう一回行ってほしいなと思うし、じゃあ何ができるかということを一生懸命考えなきゃいけないし、本当に奥深いです。
確かにおっしゃる通り、僕のひとつのポイントからすると、介助してもらう方々とか、介助する側のお話もありますが、自分で自分の世界を切り開いていく人たちにもっともっとエンジョイしてほしいというのはあるかもしれません。

まずは目の前のお客様、地域の方のために。そして情報が全国に広がるように。

株式会社ファイブスターのMINI甲府

【中浜】今は山梨と長野で活動されているんですか?

【上杉】はい。長野は勝手にもやらせてもらっています(笑)。

【中浜】今後は活動場所を増やす予定などはあるんですか?

【上杉】自分が住んでいる場所をメインにしたいので、とりあえず山梨県内です。なぜか問い合わせがくるのは長野からのディーラーさんで、山梨は僕らの活動不足なのかまだまだです。でも、同じようなディーラーさんをやっている方が広島にもいらっしゃって、彼も違う県のお客様のケアをしたりしていたんですけど、この間会って話をしたらやはり遠くに住むお客様は結局待たせなきゃいけなかったり時間がかかってしまうことを考えると身近な人が身近な人と一緒にケアしあうことが重要だと思わされました。なので、僕も調子にのって広げていくとまわりに迷惑がかかってくるだろうな、と。
せっかくよかれと思ってやったことがかえって負担になったら最悪だなと思うので、目の前のお客様、いわゆる山梨県の人たちにはちゃんと僕らの存在を分かってくれて、使いたいというときに使っていただくとか、頼っていろいろ聞きたいというときに僕らがいろいろ答えられるような状況を作りたいなと思っています。

【中浜】本当にこういう情報がもっと広がってほしいですね。

【上杉】本当に必要な人が知らないと意味がないですからね。介護をしている人とかはこんなのを聞く時間もないし、見る時間もないし、感じる時間もないんです。実際僕がそうだったので。病院の中でケアをしていると、こういった情報を調べようと思っても疲れて調べられなかったり、家に帰るともうぐったりだったり、翌日また病院へ出向いて、ケアして、少し時間が空いたからネットで調べようと思いつつも気付いたら寝ているなんてことも。それが現実なのですごく難しいんですよね。なので、こういった場所でみなさんに知ってもらえると嬉しいです。

編集者の一言

「誰でもが好きな車に乗りたい」そんな当たり前のようなことが当たり前じゃないという事実。贅沢とかそうじゃなくて、元気でいたい理由やリハビリを頑張る理由が自分らしい姿の継続につながることが、本当の目的であり目標だと改めて思いました。いつまでも自由に自分の好きなように選べることが1つずつ増えていくといいですね!!

株式会社ファイブスター(FIVE STAR co. ltd) http://5star-yamanashi.com

MINI甲府 http://www.kofu.mini.jp/

中浜 崇之

この記事の寄稿者

中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/

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