インタビュー

人が集まるから、知恵が集まる。時計屋+カフェ+居宅介護支援事業所「ライブラリケアプランセンター」代表山下勝巳さんインタビュー!

大阪府羽曳野市の商店街にある、居宅介護支援事業所「ライブラリケアプランセンター」。時計屋さんでもあり、カフェでもあり、ケアマネジャーが介護の相談に応じるケアプランセンターでもあり・・・!?

ライブラリケアプランセンターとは?

ライブラリケアプランセンターの山下勝巳さん

大阪府羽曳野市の商店街にある、居宅介護支援事業所「ライブラリケアプランセンター」。時計屋さんでもあり、カフェでもあり、ケアマネジャーが介護の相談に応じるケアプランセンターでもあり・・・!?
そんな不思議な場はどのように生まれたのでしょうか?運営する株式会社山勝ライブラリ代表で主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)のヤマカツさんこと山下勝巳さんにお話を伺いました!

ケアマネジャーに関する仕事の内容や役割などは以下の記事をご覧ください。

ケアマネジャーとは|仕事の内容・選び方・付き合い方などを紹介

時計屋の中にケアプランセンターができるまで。

店舗の外観

【中浜】時計屋さんの中にカフェとケアプランセンターがあるって、変わった作りですね(笑)。

【山下】そうですね、表には「山勝時計店」の文字、中に入ってみたらカフェ。一度目は絶対ケアプランセンターと思ってもらえないです(笑)。

【中浜】どうしてこの場所にケアプランセンターを作ったのですか?

【山下】4年前に事業所を開設する時、ビジネスとしてもきちんと成功させたいと思っていました。しかし、立ち上げたてだと相談件数が少なく、いきなり軌道に乗せるのは難しいものです。研修や講演をさせていただくことで収入を得ながら徐々にケースを増やしていきましたが、どうコストをカットするかも考えなければいけません。そこでオフィスの場所代を節約するために、父親がやっている時計店を間借りする形にしました。

【中浜】それで時計屋さんの中にケアプランセンターができたんですね。

【山下】最初の頃、お客さんが来ると「いらっしゃいませ。今日は時計ですか?介護保険ですか?」と声をかけていたんです。時計屋に来た方はみなさんだいたい「介護はまだ必要ないよ」なんておっしゃるんですが、時計の電池交換をしている10分間でお話していると、「ちょっと膝が痛くて」とか「嫁さんが最近体調に困っていて」とか、いろんな健康ネタが飛び出して来るんですね。そんな会話をしているうちに信頼関係ができる。人って、専門家やプロだから相談したいと思うんじゃなく、気心知れた人だから「この人だったら相談してもいいかな」と思って相談するわけで、ここでは自然な会話の流れから安心して介護の相談ができるようになります。時計屋と介護のミックス、全然あり!と気づきました。

ケアプランに関する種類や作成方法などは以下の記事をご覧ください。

ケアプラン(介護サービス計画書)とは|種類・作成・運用など知りたいことが丸わかり

父親の時計店引退危機・・・カフェ「FIKA三丁目」に改装。

店内の様子

【中浜】カフェは昨年からオープンしたんですよね。どういった経緯でスタートしたんですか?

【山下】時計屋をしている父親の視力が年齢とともに徐々に悪くなってきたため、細かい部品の多い時計を扱う職人としては、満足に仕事ができなくなってきたと感じたようなんです。それで父親自身から時計屋を引退しようという話になりました。
父親が時計屋を引退したら、時計屋のスペースに机を並べてふつうの事務所にしてしまう・・・でも本当にそれでいいのだろうか、と考えてみたんです。時計屋として40年続いた、お客さんがここに来る流れが途絶えてしまう。気軽に相談できなくなってしまう。
そこで人が来やすいように、飲食店にしようと思いました。この場所は商店街の中で、近くに郵便局や銀行やスーパーがあり、人通りの多いエリアです。歩道も電動カートで通れるような幅広い歩道です。もしかしてカフェをやるには好立地なんじゃないかと思い、2017年9月にカフェ「FIKA三丁目」をオープンしました。

店名の由来 ※店名の「FIKA三丁目」は「翻訳できない世界のことば」という絵本で紹介されている、スウェーデン語の動詞FIKA(フィーカ)から名付けた

【山下】カフェをオープンしてからは、お客さんが来ると「今日は時計ですか?カフェですか?」と声をかけるようになりました。それからカフェで話しながら介護の話になったら、「2階にケアマネいてるんですけど、話聞いてみます?」と案内しています。

カフェは思わぬ収穫だらけ。時計店も継続へ。

【中浜】カフェを始めてからなにか気づいたことや変化はありましたか?

【山下】長年ケアマネをしてきて対人援助技術については学んできたつもりだったんですが、妻と一緒にカウンター越しに接客するようになって、自分自身の話し方の癖に気づきました。お客さんから困り事の話をされた時、僕はついアドバイスしてしまいそうになります。でも妻は、アドバイスせず「そうなんや。大変ですねぇ。」と頑張りを讃えています。困っている人に手を差し伸べることが優しいとは限らないわけで、「まだ自分でやれる」という気持ちになれるから頑張れることもあります。そのことを妻から学びましたね。

【中浜】先ほども常連さんがたくさん来て、奥様に話していってましたね。

【山下】常連は地域の高齢者が多いですね。みなさん店名の「FIKA」ってなかなか言ってくれなくて、(妻の名前の)「しのちゃんの店」って呼ぶんですよ(笑)。
それから僕、実はあまりコーヒーが好きではなくて・・・、最初の頃は美味しくなかったんですよ。でも、だからこそお客さんが「こうするといいよ」と教えてくれたり、時には「ちょっと待ってやらせて」と取り上げられたり(笑)、こちらが一方的に支える側になるのではなく、お客さんが支える側になってくれています。高齢者にとって、支える側になっているからこそ頑張れるということもあるのだろうと感じています。
コーヒー、おかげで今はだいぶ美味しくなりましたよ!

美味しいコーヒー

【山下】一番想定外で嬉しかった変化は、父親が時計屋を引退するのをやめたことです。カフェを開いた時はもう時計屋をたたむつもりだったんですが、たくさんお客さんが来て声をかけてくれることが、父親にとってもよかったようで、時計屋を続けることになりました。父親は奥の部屋にいることが多いですが、カフェに出てきて地域の人と話すこともあり、「現役に勝るリハビリはない」と、父親の姿を見て感じています。

時計店を営むお父様 ※時計店を営むお父様。店の奥には箱型の作業スペースが

社会資源に関する情報がどんどん集まってくる場所。

店舗外観

【中浜】ケアプランセンターのほうは、順調ですか?ヤマカツさん自身も主任ケアマネとして、さまざまな相談事が来ているんじゃないですか?

【山下】現在スタッフは6人になり、採算も取れるようになりました。主任ケアマネとしての主な役割は、地域を耕すことと、ほかのケアマネへのスーパーバイズですが、近年はどんどん覚えることもやることも増えてきていると思います。そうなってくると、ケアマネは一人でやるのではなくある程度のまとまったチームでやらないと難しい。スタッフが増えたことで役割分担できるようになり、私のほうは地域耕しにより専念しやすくなりました。

【中浜】ケアマネとしても、この時計店やカフェが一体になっていることでやりやすい部分が多いのではないでしょうか。

【山下】そうですね。ケアマネは、フォーマル・インフォーマル関係なく社会資源をすべて把握しておく必要があります。一般的にはみなさんそれは難しいとおっしゃると思うんですが、ここではこのスタイルでやっているおかげで自然とできているんです。業者さんや街の商店さんが、ケアマネに営業に来ることもあれば、カフェにお客さんとして来て話していってくれることもあります。そうすると「今こんなサービスをやろうとしている」といった情報がどんどんストックされてくるんですよね。困っている人と、助けられる人が、このカフェを介してジョイントしていきます。

【中浜】人が集まる場所の強みを最大限に活かしていますね。

【山下】最近では、時計屋+ケアプランセンター+カフェという三位一体型が興味を引くからか、行政や街に介護予防や町おこしの観点からも注目してもらえるようになっています。市の協議会に参加させていただくようになり、介護に限らず街の課題を行政と一緒に考える機会もできました。社会的資源が集まってきて、僕らはその間を持つことができて、街の活性化にもつながる。キープレイスというか、場所がカギになって繋がりが生まれていっていますね。

ケアプランセンターで働くケアマネさんの様子

高齢者に「ライブラリ」で居続けてもらうために。

【中浜】「ライブラリケアプランセンター」はなぜ、「ライブラリ」という名前なんですか?

【山下】アフリカの格言に「老人が一人なくなることは、図書館が一つなくなることと同じ」というものがあります。アフリカだと長老が知恵の集積で、なんでも長老に相談するのだと思います。今はスマホでなんでも調べられるけれど、話してみるとやはり高齢者の知識はすごいんですよね。高齢者にライブラリ(図書館)で居続けてもらうためになにかできることをしたい、という願いから、ライブラリケアプランセンターと名付けました。

【中浜】アフリカの格言ですか、いい言葉ですね。今後の展望について聞かせてください。

【山下】今はこの場所に来るのは高齢者が多いですが、今後はカフェのテイクアウトスペースに商品を充実させて、学生や若い人たちにも気軽に立ち寄ってもらえる場所にしていきたいです。幅広い世代のさまざまな人たちが集まって交流する、そんな場所になっていくと嬉しいですね。

中浜 崇之

この記事の寄稿者

中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/

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