音楽で、治すよりも楽しんでもらう リリムジカインタビュー第一弾!

インタビュー , 音楽療法士 , リリムジカ
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2015.01.13
リリムジカインタビュー ―株式会社リリムジカ 共同代表の柴田さん、管さん

介護施設で参加型の音楽プログラムを提供する、株式会社リリムジカ

【中浜】リリムジカとご自身の紹介をお願いします。

【管】リリムジカの共同代表をやっています、管です。リリムジカは、「心に響く音楽」という意味のイタリア語のリリカメンテという言葉とムジカという言葉を合体させた言葉。2008年に会社ができました。「音楽をとおして人が自分らしく生きられる社会をつくる」というミッションで、老人ホームやデイサービス、いわゆる介護施設に音楽ができる人を出張してもらっています。
そういうのは一般的には慰問演奏が多いと思うんですが、僕らはどうやったら集まった人自体が輝けるか、普段は歌わない人が歌ったり、普段はお話しない人が話したりという瞬間を作れるか、というのを考えて、参加型の音楽プログラムをやってます。
私自身の役割はマネジメントや営業です。施設さんに提案したり、みんなが働きやすいように環境を整えたりするのが仕事です。

【柴田】共同代表をしています、柴田です。大学で、音楽療法を勉強したいと思って、昭和音楽大学の音楽療法コースに入りました。せっかく勉強したことなのでそのまま仕事にできたらと思っていたんですけれど、音楽療法だけで食べていくのはまだまだ狭き門。学んだことを仕事に生かせる組織を作りたい、という思いが浮かんできたのがきっかけです。
最初は子どもの分野でやれたらいいかなと思ってたんですけれども、全然仕事がこなくて(笑)

【中浜】リリムジカを立ち上げた時は、子ども向けだったんですか?

【柴田】そうなんです。音楽療法の世界は、高齢者、障がい児、精神疾患、というのが三大領域で、当時は子どもしかやりたくなかったんですよ(笑)子どもの音楽療法をやる人が集まりそれだけで食べて行けるようにと思ってこの形態になったんです。ただ、あまり仕事が来ない中、介護の世界と関わることに。

音楽って、自分らしくいられる瞬間を作ってくれるもの

【柴田】私はもともと子どもに興味があって、大学の実習で子どもたちに触れてからも子どもの分野を専門的に突き詰めてきたんです。だから高齢者とはあまりに接点がなさすぎて、認知症の方や介護度の重い方とどうコミュニケーション取ったらいいかもわからない。
一方で、言葉でのコミュニケーションが難しいお子さんと音楽で通じ合えた経験が実習の中でもありました。音楽がなかったら関係が築けていなかったと思った時に、この仕事はすごい可能性を秘めているなと思ったんです。
音楽って、自分らしくいられる瞬間を作ってくれるものじゃないかなと思っています。音楽を楽しんでいる間は、しがらみとか上下関係とか、そういうものがなくなりやすい場だと思うんですよ。ご高齢の方に至っても、介護を受けて生活する中で懐かしい歌を思い切り楽しめるということは、人間にとって必要な瞬間なんじゃないかな?と。

【中浜】高齢者に対してどこか壁があった中で、1回目はどうだったんですか?

【柴田】びっくりしたんですよ、楽しくて(笑)
ひとつは、自分の中で認知症の方がちょっと近い存在になれたんです。今思えば些細なことなんですが、壁に貼ってあるものを繰り返し繰り返し読んでいるおばあちゃんに「おはようございます」と挨拶したら、私の手をなんとなく握って。「あんた手すべすべしてるねー」と、触ってくれた手がすごく暖かくて、認知症の人がその一日で近くなったんです。 もうひとつは、職員の方が撮った写真をすぐにパソコンにつないでくれて、それを見ながら「いやあ、いい顔してるね」って言ったんですよ。「成功したんだ」と思って、達成感もありました。

【中浜】子ども向けと高齢者向けの違いはなんですか?

【柴田】子どもの場合は、一番の目的が療育の観点です。音楽を楽しむ、ストレス発散の意味合いもあるんですけれど、一番は成長に関わることを音楽で促進する。
お年寄りの場合は、「残存機能の維持・向上」というのが教科書的にはよく出てくるんですが、そこに楽しみや深い意味での癒やし、認知症で不安が多くなっている中での安らぎ、そういうことが大きな意味になってくるんじゃないかなと思います。

一番拗ねている人をどうにかする方法を一生懸命考える。

【中浜】初めての1回をやってからすぐにがっちり介護へシフトしたんですか?

【管】ガッと気合が入るには、まだ時間がかかったのは正直なところ。
2008年に会社を作って、暮れぐらいにはうまくいかないことがわかり、ヒアリングすることにしました。障がい児のお母さん、介護職員、介護している家族、50人以上にインタビューしたんです。
調べていったら、福祉・介護の領域は方向性として「本当はもっとみんな楽しくやりたい」と思っている。だけど、時間とお金と人手に制約があって、つまんなくなってしまっている。おおまかにまだ時代の方向性として、「介護の現場って楽しいとか幸せを感じられる状況に至っていない」。それでもしかしたら音楽で何かできるかもな?と。
だけど、月2件とかだったら売り上げにならないんですよね。(介護は)何となく方向性としてはあるけど本気でシフトできなかった。

【中浜】そこからどう数が増えていったんですか?

【管】いくつか自分で行ったり紹介で入ったりするうちに、なんとなく経験が貯まっていくんですよね。ただ、僕は柴田さんがやっているのを見た時に最初は「まだまだ厳しいな」と思った。音楽ができないなりに思ったことがあり。
それで2009年から2010年にかけてほかの音楽療法を見学させてもらったり、NPOもんじゅのミーティングに出て介護職員が思っていることを聞いたり、いろんな考え方や話を聞きました。そしたらだんだん、この介護福祉の世界で足りないものがあって、そこに柴田さんが築きつつあるスキルが活きていくんじゃないか、と思うようになったんです。

【中浜】その中で今のスタイルを構築していったんですね。

【柴田】そうですね。いい意味で音楽療法の世界を知らない人の目線で見て改善する。あと、私自身がお年寄りについ最近まで受け手意識だったので、かなり目上の方に対して「やってください」とか言えず、「よかったら」ぐらいのスタンスでやってたんですが、それが思いのほか良かったみたいで。

【管】そもそも僕が、みんなで歌うのが嫌いで。「さんはい」って学校じゃないし、一般的な男性の気持ちでなんで歌わなきゃならないんだろうってずっと拗ねていた(笑)
でも、その一番拗ねている人をどうにかする方法を一生懸命考えると、みんなが楽しめるようになる。

リリムジカがやっていることは“場づくり”

リリムジカ柴田さん 【中浜】「ミュージックファシリテーター」という言葉が出てきますが、それはリリムジカさんが作った言葉ですか?音楽療法士ではなくその言葉を使うのはなぜですか?

【管】ファシリテーターという言葉が浮かんだのは2012年の5月ごろです。きっかけは、今日みたいな感じでインタビューを受けた時に聞き手の方が「リリムジカがやっていることは“場づくり”だよね」と言った時。ずっと“療法”に違和感があったんです。

【柴田】当時やはり音楽療法のイメージが「利用者さんに小難しいクラシック聞かせるんですか?」といったことや、過度に医学的な成果を期待させる場面もあって。もちろん「何がどうなるか」も大事な部分ですが、介護の世界で何が大事かと言ったら、認知症があってもそれとうまくお付き合いしながら穏やかに楽しく暮らせること。そのお手伝いを音楽でできるという視点があったんですよ。
もう一つ、Aさんという人がいたら、Aさんに直接どんな影響があったかだけでなく、取り巻く環境のケアも含めていいサイクルを起こしていくこと。それは「場づくり」だと言われて、そっかという感じだったんです。

【管】利用者さんとの会話の中で生まれた話から、「こういう歌を歌いましょう」とか、まさにファシリテーターとしての仕事ですよね。
だから、ファシリテーターという言葉はすごく合ってるなって。

次、参加したくなるにはどうしたらいいか?

【管】僕らはシンプルに「次、参加したくなるにはどうしたらいいのか?」を考えています。音楽療法士のなかには「音楽療法って何だろう?」「何のためにやっているんだろう?」と悩んでいる人も多いのですが、その一点に絞ると、やることはシンプルになっていくんですよ。
ご高齢者本人にとっては、次参加するために「リハビリを頑張ろう」とか、生きる目的になる。デイサービスの事業者だったら、次参加したくなるプログラムがあれば最強じゃないですか。何か楽しみになるものがある、それに向けて頑張れるというのは、誰にとってもいい目標だから、そこに絞っています。

【中浜】音楽療法士さんって結構悩んでいるんですね。

【柴田】学校では、音楽療法は機能訓練や脳の活性化がメインの目的になっている事が多く「目標を立てて、アセスメントして・・・」と、ほかのリハビリに倣った形を取るんです。ただ、効果がわかりにくくなりがちにあります。

【中浜】理学療法・作業療法だったら「この腕がこれだけ動くようになった」のような目に見えて分かりやすいスケールがあるけれど、音楽療法は難しいですよね。しかも、高齢者の場合は先ほどお話されたように認知症の症状があっても治すのではなくうまく付き合って生きていくほうが余程目的ですよね。

【柴田】そもそも、私の原点としても「音楽で人の役に立つ」ということが一番上にあって、その役に立つが何かと言ったら、治すよりも楽しんでもらう。楽しんでもらうための方法論として、音楽療法という名前は別に使わなくてもいい。”なになに法”みたいにこだわらず、「楽しんでもらえる可能性があることなら何でもやればいいじゃん」というのがリリムジカ全体のスタンスとして、今、浸透しています。

近日、このインタビューの第二弾を配信予定!お楽しみに♪
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寄稿者

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中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/

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