波平の年齢
皆さんご存知、サザエさんのお父さんである磯野波平さんらの年齢を見ながら、戦後の日本人の一生そのものがどう変わってきたのかを考えてみましょう。早速ですが、以下のアニメの登場人物達の年齢、当てられますか?
アニメの登場人物の年齢はいろいろなまとめサイトがあって見てると飽きません。
話題になったりすることも多いので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
今回は取り上げませんが、ケンシロウやマリオ、星一徹は意外感あります。
波平 VS 友蔵
以下、答えです。いかがでしたでしょうか。
さくら友蔵は当てられたのではないかと思います。
ブライトさんはすごいですね。あのリーダーシップには学ばされます。
のび助はちょっと意外、丹下段平と波平は相当難しかったのではないでしょうか。
特にそれぞれ孫がいる友蔵と波平の年齢差に驚きます。
波平は働いているので60前だろうと考えた方はいらっしゃるかもしれませんが、それでもあの外観には違和感を覚える方が多いのではないでしょうか。
なぜ、これほどまでに見た目の差が生まれるのでしょうか?
端的にいうと、作品の書かれた時代が理由です。
サザエさんは1947年、ちびまる子ちゃんは1987年に連載スタートしています。
「老後」の誕生
戦後の日本の一生をわかりやすく一覧にしてみました。老後の誕生 男女別に1947年、80年、2012年の平均寿命、多数の最終学歴、平均初婚年齢、第一児の出産年齢、一般的な定年の時期をプロットしたものです。あくまで平均ですし平均寿命ですので、47年生まれの人がこういう人生を送るわけではありませんが、当時の日本人をイメージするおおよその目安にはなると思います。
実は47年には、男性の平均寿命は50歳だったんです。
図には載せていませんが、そもそも人類の平均寿命は19世紀まで30歳です。
そこから100年あまりで倍以上まで伸びたのですが、特にこの50年あまりで30年も平均寿命が伸びているのです。
伸びた理由について言えば、乳幼児の死亡率が高い為に平均寿命が低く算出されるということはあります。
それでもそもそも定年というものが平均寿命よりも高いところに設定されており、子育てが終わってからの時間がそうそう多くないことが分かります。
それが80年代になると、定年も5年ほど伸びますし、若干初婚年齢も上がりますが、平均寿命が20年以上伸びています。それによって、子育て後25年、定年後でも10年以上の余剰時間が生まれています。
2012年でもその傾向は変わらず、時間が伸び続けています。今や子育て後(長子のですが)、30年もの時間があるということです。
波平も友蔵も、当時の平均寿命を少し超えたところだと見ると、同じような老け方をしているのがそれほど違和感なく見えてくるのではないでしょうか(もちろん波平の方がちょっと元気ですが)。
女性の場合でも状況は同じで、特に女性の平均寿命の伸びは著しいため、2012年においては子育て後35年の時間がある事になります。
そしてこの時間は、昔は存在しなかった時間なのです。
「老後」の誕生です。
そう、老後とはかつては限られた人が例外的に得ていたものだったのです。
これは戦後からの復興、経済成長とあわせて、高度な医療・衛生や皆保険制度、年金制度の充実によって成し遂げられた、日本の素晴らしい成果だと手放しで賞賛すべきものと私は思います。
人類史上、初めて生きるためだけに生きる必要のない、これだけの時間を作り上げることに成功したのです。
「老後」という実り多い時間を、大多数の国民が享受できる、素晴らしい社会の実現です。
にもかかわらず、世間では超高齢社会というと、社会保障の観点から否定的にとらえ、高齢化は悪であるかのような風潮すらあります。
私は、高齢化という現象が人類史上偉大な成果であることをまず第一に認識すべきではないかと思うのです。
加齢という言葉の意味
日本語で「加齢」は英語では"Aging(エイジング)"ですが、加齢にはないニュアンスがあります。それは、ワインや香水、スピーカーなどに対して使うAging。
時を経ることで熟成され、丸みを帯びて複雑に味わい深くなることです。
年をとることを、そうした観点で捉え直し、高齢者が多い世の中であることを積極的に肯定すべきではないか。
そうした時間を30年も味わえる幸せな時代に生きているという前提にたって、その中でそれぞれの世代がどう生きるべきかを考える。
そんなポジティブな議論の出発点が望ましいのではないか。
そのうえで、もちろん深刻な問題である社会保障の問題や介護離職の問題を考えると、同じ深刻さではありながら、でも少し前向きに問題解決に向き合えるのではないでしょうか。
前向きに超高齢社会に向き合いたい。そう考えています。
この記事は株式会社こころみのブログを元に加筆・修正しております。
― 株式会社こころみは、離れた親を持つお子様のため、見守りサービス「つながりプラス」を提供しております。
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この記事の寄稿者
神山 晃男
1978年生まれ 長野県伊那市出身
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。
コンサルティング会社を経て、アドバンテッジパートナーズにて投資ファンド業務に従事。
2013年に株式会社こころみを設立、一人暮らし高齢者向け会話型見守りサービス「つながりプラス」事業を展開。
Twitterアカウントは、@akiokamiyama