3Kなんかじゃない。介護は「ありがとう」が循環する仕事

インタビュー , 認知症 , ヘルパー
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2014.10.25
田中まゆみさん
都内の訪問介護事業所でサービス提供責任者をする田中さんに、熱意と想いを聞きました。

3Kなんかじゃない。介護は「ありがとう」が循環する仕事。

【岡】どんな仕事をしてるんですか。

【田中】訪問介護のサービス提供責任者をしてます。仕事内容は常勤社員やパートのヘルパーさんの教育をしたりシフトを作ったりとかですかね。一番メインの仕事は、ヘルパーさんに同行して利用者さんに必要なケアを一通り教えることです。

【岡】仕事楽しいですか?

【田中】楽しいですね。もう、大好き。

【岡】なにがそんなに好き?

【田中】なんだろう。おじいちゃんおばあちゃんの存在がもう大好き(笑)

【岡】なんか介護って「3K」という表現が使われてネガティブなイメージがあるじゃないですか。でも田中さんはめっちゃ好きなわけじゃないですか。田中さんにとって介護の仕事ってどういうものなんですかね。

【田中】仕事って、どんなものでもそれぞれ大変な所があると思ってまして。まぁ介護の仕事は「人対人」だからクレームとかが発生した際は大変なこともあったりするけど。でも、利用者さんが言ってくれる「ありがとう」っていう言葉で、結構ヘコんでる時でも「また頑張んなきゃ!」って気持ちになれるんですよ。励まされるんです。そうするとこっちも「ありがとう」って思うし、利用してくれるおじいちゃんおばあちゃんからも「ありがとう」って言われるので、なんかもう「ありがとう」が循環する仕事だと思います。

【岡】いい言葉だねそれ。「ありがとう」が循環する仕事。

介護することだけがヘルパーの仕事じゃない。

【岡】介護の仕事はお勧めしたいですか?

【田中】勧めたい。同じ福祉の専門学校に通ってた子とか特に勧めたい。認知症だろうと何だろうと、おじいちゃんおばあちゃんはとても尊敬しているし、愛しいと思っちゃう。こういう表現が相応しいか分からないけど、この仕事って下手なバラエティ見てるよりよほど面白いというか(笑)

【岡】すごいね、バラエティー見てるより介護だろと。

【田中】本当に笑いの神が降ってくるんだよ(笑)でも、一番理解してほしい方々に限ってまだまだ認知症に関する理解が低いのが現状。例えばひとり暮らしの認知症のおばあちゃんがいて、その方はとても綺麗好きで近所のゴミを拾ったり掃除をしてくれたりしているの。でも近所の方々は認知症ってだけで、「どっかいっちゃうんじゃないのか?」とか「なにかするんじゃないのか?」ということを言ってしまってて、その方が自分の町で生き辛くなってしまってて。認知症と診断されたすべての方が家に帰れなくなったりするわけではないのに。こういうことが無くなるよう、時間をかけてでも認知症に対する正しい理解をしてもらえるように働きかけたいなって思ってます。

【岡】でもそれってヘルパーの仕事っぽくない感じというか、ヘルパーの仕事というよりは地域のコミュニティーへの働きかけじゃないですか。そういうことをヘルパーがやるイメージは多分ないと思うんだけど、田中さんはそういうのもヘルパーの仕事だと思う?

【田中】思う。その方の周りが一つのチームみたいになって、近所の人も家族も関わるすべての人たちが地位とか関係なくチームになれれば、その人が自分の町で自分らしく生活できるかなと。私は認知症についての勉強をしたから今こう思えるけど、それまでは認知症がどんな症状で、どういう支援が必要かなんて全く分かってなかった。だけど、知ることによって対応の仕方って全然変わってくるんだよね。だから、その知識を持ってる私がやらなければならないことだと思う。

仕事として行ってるというよりは、会いたい人に会いに行ってる感じ。

【岡】なんか介護をやっててすごい情熱を感じるんですよ。普段なんのために働いている?

【田中】なんのため?んー、おじいちゃんおばあちゃんのケアに行くっていうよりかは「あなたに会いにいきます!」みたいな気持ちなんだよね。もちろん仕事もちゃんとしてるけど(笑)仕事なんだけど仕事じゃないっていうか、気持ち的な部分がね。最近、100歳近いおばあちゃんの所に行ってるんだけど、おばあちゃんはほぼ寝てて、でも時々元気があると一生懸命目開けてこっちを見てくれたりとかするの。だからおばあちゃんの所に行く時は「今日は起きてるかなー」みたいな。会いに行くまでそういうの考えたりしてる。

【岡】へぇー。好きなんだね本当。なに、そういう育ちなの?おじいちゃんおばあちゃんに育てられたとか?

【田中】育てられたかったけど、一緒に暮らしたことは無かったよ。年に何回か会えればラッキーぐらいだった。自分のおじいちゃんおばあちゃんにできなかった分を”恩返し”じゃないけれど、利用者さんたちにそういう気持ちが根底にあるかな。

アルコール依存症のおじいちゃんのビールをノンアルコールビールに差し替え成功。

【岡】今まで、その介護3年やる中で、おもろエピソードというか、感動秘話でもいいし。

【田中】そうだなぁ。アルコール依存症のおじいちゃんがいて(笑)

【岡】早速おもしろそうだね(笑)

【田中】関わったときはまだ結構呑んだくれな状態。でも、ちょっとマシになったかなぐらいな感じだったんだけど。最近ってノンアルのビールでも結構おいしいのとか出ているじゃないですか。そういうのでだまくらかせないかみたいな。で、ケアマネさんと「じゃあそれちょっと買って様子見てみようよ」って感じでちょっと作戦を練って、買い物の支援もあったりとかするんで。買い物して、「ちょっと最近出たやつだから、おいしかったから飲んでみてよ」ってみたいな感じで言ったら意外とすんなり入ってくれて「あ、これいけるんじゃないか」って感じで。

【岡】もちろんノンアルとはいわずに?

【田中】いわずに。ちょっと小さい字で書いてあるけど読まないから誤摩化せてるのと、あたしのことも信用してくれてたから「おぅおぅ。サンキューサンキュー!」なんて飲んでくれてて。 それでうまいこといってたんだけど、ある日ヘルパーさんから「だれだれさんめっちゃ酒臭いです!」みたいな電話が入って「まさか!?」みたいな感じでいったら一升瓶飲み干しちゃってて(笑)。

【岡】すごいね。

【田中】そうそう(笑)それで大失禁みたいな。反動なのか何なのか分からないけど、今でも時々爆発して飲み屋に飲みにいっちゃったりしてて(笑)でも普段はノンアルコールと疑わずに「おう!お前もビール飲めよ」みたいな感じで勧めてくれるから信じてはいるんだと思うんだけど、本能で本物の酒を探し求めているみたいな感じ(笑)でも、元々は本当にアルコール依存症だった人で、普段は全然ノンアルコールでいけているから成功は成功なのかなと思って。だから時々失踪して飲み屋いって倒れて電話かかってきたりもするけど、誰だって羽目外す時あるし楽しみとしてたまにはいいのかなって。制限ばっか受けて長生きするのは、あたしだったらつまらないなぁと思ってしまう。だから、ご家族はすごく深刻な感じになっちゃうんだけれども、あたしは心の中で「またやったな。プッ」みたいな(笑)

認知症のことを、周りの方々に広める活動をしたい。

【岡】介護をこれからも多分続けると思うんだけど「介護職の田中 真由美」としての将来的なビジョンみたいなものはあるの?例えば5年後とか10年後とか、イメージ。

【田中】そうだなぁ。精神保健福祉士の資格を活かしつつ認知症の勉強を続け、もっと経験積んで、認知症についての知識を周りの方々に広めていきたい。

【岡】さっきのその「近所の人たち」みたいな話?

【田中】うん。そう。ほんとに身近なところに広めたいというか。そこが一番かなぁ。あとはジジババ大好きな人達と一緒に、楽しく仕事がしたい(笑)

【岡】うんうん。

【田中】あと、せっかくこの業界に入ってきてくれた人たちには「介護の仕事はこんなに楽しいぜ!」みたいなのは教えたい。

【岡】いやぁ、結構珍しいよ。そこまで本気で「マジで楽しいんだよ。ボォ~ン!」みたいなのを伝えてくるヘルパーって俺初めて会ったかもしれない。

編集者のひとこと

「ザ、現場」とはこの人のこと!ここまでアツく楽しく介護の現場を語れる人がいるんです!そして全国に田中さんのようなプロフェッショナルが溢れている国なのです日本は。こういうママさんヘルパーが笑顔で働き続けられる環境を作っていかないといけないのだと思います。現場の運営、制度の管理とそれぞれ分けて考えずにみんなで業界を盛り上げていきたいですね!!(岡勇樹)
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寄稿者

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岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)

介護のほんねニュース初代編集長。1981年 東京生まれ。3歳〜11歳までアメリカ・カリフォルニア州で生活。27歳で高齢者介護と障がい者支援の仕事を始め、29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立。近年は厚生労働省 介護人材確保地域戦略会議の有識者やNHK出演など多岐に渡る活動を展開中。(http://ubdobe.jp)