障がい者雇用から得たもの、見えたこと 焼肉店キングコングにインタビュー

障がい者雇用 , キングコング
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2015.02.23

不器用だけど、一生懸命。

大石英吾さん ―株式会社ナガイ産業 部長 兼 株式会社NSP キングコング泡瀬店 店長 大石英吾さん

【岡】大石さんがされている活動の概要をちょっとご紹介いただけたら。

【大石】僕が見ているのは、主に現場でA型雇用(就労継続支援A型)をされているBIメンバーたちの・・・

【岡】ビーアイメンバー?

【大石】はい、僕らは障がい者のことを「不器用だけど、一生懸命」っていう意味でBIメンバーって呼ぶようにしています。それで、BIメンバーたちに技術指導しながら飲食店に来るお客様をどう満足させるか、というのが僕の仕事ですね。

【岡】今何名くらいの、その不器用だけど一生懸命なBIメンバーさんはいらっしゃるんですか?

【大石】現在6名で、うち3名が12月1日から一般雇用になりました。

「やりたい」ことに羽ばたける出口を作ること。

キングコング泡瀬店 キングコング泡瀬店 【大石】いまやっている障がい者雇用を始める前に、色んな所を見学させていただいたんですけど……これ、ぶっちゃけていいですか?

【岡】いいですよ。

【大石】建物もきれいで、格好も衛生的で、調理器具とかもすごいきれいだなぁ、と思うんですけど。でも、僕から見ると人間としてじゃなくて動物が飼われているような印象を持ったんですよ。「この人たちはこのあとどこに行くんだろう?」っていうふうに思って。その思いが今もずっとあって「A型雇用のあと、どうなるのか?」と思うと同時に、僕がこの人たちの出口を作りたいって思ってます。

【岡】なるほど、そこで実際に送り出しができる初めての3名っていうことですか。例えばその人が「別の仕事をやりたい!」と羽ばたいていくことも応援するぜ!みたいなスタンスですか?

【大石】そうです。本人たちが「やりたい」選択肢を「キングコングでどれだけ見つけてもらえるか」っていうのが僕の毎日の目標ですね。

すべての業種・業態に共通する「目的はお客」ということを学ぶ。

キングコング泡瀬店 【大石】まずは、どんな業種・業態でも「目的はお客だよ」っていうことを学んでほしいですね。それがあってさらにそれぞれの業種・業態の中で『人の役に立つ』ということが、世の中にとっても、自分にとっても、組織にとっても最大の喜びだよっていうことを知ってほしいです。

【岡】なるほど。それってどういうふうに伝えるんですか?

【大石】週一回、もしくは必要であれば随時、勉強会って呼んでいるミーティングを開くんです。そこでは今言った価値教育に当たる、例えば「生きるとはどういうことか?」とか「仕事ってどういう意味か?」とか、解釈の仕方をみんなで考える時間と、また同じ時間を使って経営の原理原則、僕らいまランチェスターを教わってるんですけど、本人たちに分かりやすく噛み砕いて戦略と戦術の部分を教えたりする時間。あとはそれをどう実践するかという時間ですね。その3つを勉強会でやっています。

【岡】へぇー、すごいな。いいですね。店舗っていう単位でやってるのはなかなか珍しいですよね。それを受けて変化ってあります?

【大石】初めは「勉強」っていう言葉がいけないのか拒絶するんですね。で、スタッフが辞めてしまって・・・その時はやらないほうがいいのかなと思ったんですけど。でも、今振り返るとやってよかったなと思います。大事なのは価値観の部分だなと思いますね。

「ここ障がい者雇用やるよ」って話が出た時は、正直「絶対できない」って思った。

キングコング泡瀬店 キングコング泡瀬店 【岡】厨房のほうで「1.2.3.4」とか「A.B.C.D」なんて書いてある冷蔵庫を見たんですけど、あれは従業員が分かりやすく仕事できるために作ってるんですか?

【大石】はい。こちらにもあるんですけど、作業時間割りを写真等で作ったりしてます。 キングコング泡瀬店 キングコング泡瀬店 【岡】これ、一分単位なんですね。『9:40から9:42 カーテンを開ける』...っていうか結構早くからやっているんですね。開店2時間前から準備ですか。

【大石】どんどん早くなってですね(笑)いま8:40ぐらいから「早く仕事がしたい」ということで待ってるんですよ。

【岡】マジですか?

【大石】本当です。花の水かけも自分たちでやって。BIメンバーと働いていたら「もう健常者と仕事したくない」って気持ちになるんですよ(笑)成長意欲っていうのは周りにすごい良い影響を与えますね。 キングコング泡瀬店 【大石】「ここ障がい者雇用やるよ」って話が出た時は、正直「絶対できない」って思ったんですよ。障がい者が全く分からなくて。暗い、暴力的、何するかわからないというような偏見を持ってました。何よりも、障がい者と一緒に働くと効率も悪いし生産性も低いと。とはいえ、やると決まったので、高知で事例の見学をさせて頂きまして、「冷蔵庫に番号振るんだよ」とか、「作業時間割り作るんだよ」とか「包丁もテープで色分けして、肉と野菜の包丁分けなさい」とか教わりました。それを持ち帰って実習生を迎え入れて大丈夫って思ったんですけど、最初は全然うまく行かなかったですね。

【岡】うまく行かないっていうのは、例えばどういうことなんですか?

【大石】時間に間に合わないとか、写真通りにできないとか。それで、ある日突然「これってやり方ではなくて、その人たちを知らないからじゃないか?」っていうことに気づいて、健常者と障がい者のペアを作らせて良いところと悪いところ、課題だなと思うところを毎日報告してもらったんです。そうすると、その元々いた健常者のメンバーがBIメンバーたちの良いところ見つけるようになったんですよ。そしたら、なんかうまくいくようになったんですよ。

【岡】あ、表とかは変わってないのに、うまくいくようになったってことですか?

【大石】はい。そうです。彼らはほんとになまけないんです。でも極端で、自分が興味がないものはまったく見向きもしないんですよ。キッチンに居る子は『ONE PIECE』が好きなので、ずっと貼ってあるんですけど、あれ。あの子時間割り見なかったので時間がもうバラバラなんですね。ほぼ間に合わない。でも、あの絵を描いたら時間割を見るんですよ(笑) キングコング泡瀬店 【岡】なんかあれですね。障がいとか関係ないですね。お互いコミュニケーションを取る中でだんだんわかってきて、それでその人のモチベーションが上がるんだらそれやろうよみたいなことだから。店長にもすごい変化があったんじゃないですか?

【大石】すごい変化でしたよ。健常者と障がい者「何が障がいなのかな?」とか分からなくなってですね。こと仕事においては、「むしろ障がい者って呼ばれる人たちのほうが健常者じゃない?」って思うんですね。

【岡】なるほど、きっちりやるし。

この子たちを見ていると、とても健康だと感じる。

キングコング泡瀬店 キングコング泡瀬店 【大石】優れているところはいっぱいあるんですけど、一番の理由は意欲だと思います。エネルギー。それをすごい感じまして。それゆえ、なにが健常者か、なにが上司か、とか分からなくなりました。じゃあその障がい者たちの「就労支援」とかももう分からなくなってしまって。でも「やっぱりこっちの方がいい」っていう感覚はあるんですね。一緒に働いてて本人たちも楽しいって言ってくれるし、自分も楽しいし、お客様も満足してるし、組織も成り立ってるっていうこの状態のほうが、「健康だな」って思います。

【岡】「健康」っていいですね。「健康だな」って言葉すごい良い。

【大石】今までの組織は、やっぱり権力とか、権力の裏付けのお金。それしか無かったので、それが当たり前だと思って30年以上生きてきて「仕事ってなんだろう?」とか(苦笑)、「生きるってなんだろう?」とかいうのをずっと僕自身も、考えながら生きてますね、今。

人はいつからでもなんでもできるよということを伝える学校を作りたい。

キングコング泡瀬店 【岡】今後いろんな展開があると思うんですけど、大石さんは今後どんな世界観を作っていくのか気になります。

【大石】勝手に言ってるんですけど、学校を作りたいんですよ。どんな形とか具体的に決まってないんですけど。国語とか算数とかもやりたいですがなにより「仕事って楽しいんだよ!」っていう学校を今やってることと一緒に成り立たせてみたいですね。

【岡】それって今のBIメンバーが通える場所みたいなところなんですか?

【大石】BIメンバーもそうですが、今まで僕が部下として採用してきたパート・アルバイトの子たちの中には家庭環境に問題を抱えてる子とかが多くいまして、この子たちが子どものころにもっとすごい大人たちに出会ってたらな、もっと自分の将来をイメージできる人と出会ってたらな、すごい人物になってただろうなって思うんです。なので、別にBIメンバーに限らず、入りたい人はだれでも、「人はいつからでもなんでも出来るよ」っていう可能性の固まりみたいな学校を作りたいですね。

【岡】それ、すごくいいですね。大石さんの話を聞きながら、大手企業が研修にくればいいのにって思ってたんですよ。

【大石】そうですか?(笑)
組織で「生きる」を追求する。あのマニュアルがあってもそれだけでは機能しない。「コミュニケーション取って、その人を知ってからだよ」っていう基本的なことってあんまり(企業に)存在しないと思うんですよね。僕も企業に勤めていたことあるんですけどそういう概念がないところが多いです。「一番大事なところじゃん」って思うんですけど、それを発信というか社員に教育してくれるような学校というか、プログラムなのか、やってみたいなと思います。 キングコング泡瀬店 いかがでしたか?沖縄という地で就労支援に奮闘する焼肉屋さん。実はキングコングは漁業も就労支援に取り入れているようなファンキーな会社なんです。
「障がい」ってなんでしょうね?
大石店長と話していると障がいって「環境」なんだなって思います。環境を創ることで障がいが障がいではなくなり、健常か障がいかではなく、いかに「健康」な状態を創り出すかということがキーになってきますね。
今後も追いかけ続けたい面白い人とまた出会ってしまいました!(岡)
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寄稿者

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岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)

介護のほんねニュース初代編集長。1981年 東京生まれ。3歳〜11歳までアメリカ・カリフォルニア州で生活。27歳で高齢者介護と障がい者支援の仕事を始め、29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立。近年は厚生労働省 介護人材確保地域戦略会議の有識者やNHK出演など多岐に渡る活動を展開中。(http://ubdobe.jp)