エビデンス・ベースド・介護 香東園やましな石川紘嗣さんインタビュー

施設紹介 , エビデンス・ベースド・介護
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2015.03.11
「自分で考えて解決しろ」がモットーの香東園の石川さんに介護業界やケアに対する想いを伺いました! 香東園やましな石川さん ―社会福祉法人香東園 石川紘嗣さん

反射的に差し出す手やとっさの感覚が福祉ではないか

香東園やましな石川さん 【岡】まずは、自己紹介からお願いします。

【石川】社会福祉法人香東園の法人本部で、新しい施設の立ち上げや企画、人材確保、広報PRとして「香東園って面白いところだよ」というのを伝える仕事がメインです。
大学は東京の明治大学情報コミュニケーション学部で、開発経済学の勉強していました。発展途上国を訪れて「こういう風に改善したらいいな」「日本のこういう技術を持っていったらいいな」を「どういう風にしたらうまく発展できるか」と考えるゼミです。一方的に話を持っていってもうまくいかないので、相手の意見も聞きながら中から問題解決をしていく勉強をしていました。

【岡】大学を卒業してそのまま香東園に入ったんですか?

【石川】いや、就業システムの会社で営業にまず入りました。そこで2年間働いてそのあと福祉に入ったんですよ。それで福祉に入って今3年目です。

【岡】元々福祉に興味があったんですか?

【石川】就職活動の時には福祉に進もうという思いはなかったんですが、父がそういう仕事をしているので興味がなかったと言ったら嘘になりますね。今はもう、何だろうな・・・目の前で起きてることにこれどうにかしないとであったり、これおかしいでしょっていう怒りに似た感情がよく湧いたりとするんです、この業界にいると。
介護や福祉に携わっていて“楽しい”ことって、日常の中でたくさんあるんですけどまた、腹立つこともたくさんある。ご利用者の意見を聞いた時だったり、意見箱に寄せられる利用者さんの家族からの手紙を読んだ時だったり、それはすごく嬉しくいですが、まだまだ福祉に対する差別的な目も感じるのでそういったものへの見返したい気持ちも原動力になっています。
香東園にはこんな言葉があるんです。「花瓶が落ちそうになったら、どうするか」。花瓶が棚から落ちそうだったらパッと取るじゃないですか。手に水がかかるかもしれないし手が痛いかもしれないけど、反射的に手を出す。その差し出す手やとっさの感覚が福祉ではないか。それはその通りで、目の前で「ん?」という状態がよく起きる、この業界で。

【岡】「ん?」というのは、「なんじゃこりゃ」みたいな?

【石川】「なんじゃこりゃ」とか。一番最初に京都の施設の立ち上げをやって、ホームページを作ろうと思って業者を探したんですが、何個か電話したうちの一つに「福祉施設とかはいいっす」みたいなことを言われたんです。他にも「ページの雰囲気が良かったらどうせオッケーでしょ」みたいなスタンスで臨まれて。

【岡】なるほどね。扱われ方か。

【石川】「あいつらが言ったやつよりもっと良いやつ作ってやろう」みたいな、そういう思いからホームページを作ったりしました。

糸から作る制服

【石川】例えば制服もそうなんですよ。香東園の制服はずっと変わらずピンクのエプロン、男性は緑。デザインというのは利用者さんとか利用者の家族さんのようないわゆる「お客様」ためにまず第一にあるべきものであって、「これまでこうだったから」や「施設は他も普通こうだから」という理由で決めてるのがおかしいなと思ったんです。それで制服改善委員会を立ち上げて、制服の代理店を3社選びました。で、制服代理店がカタログを持ってきたんですけれど、3社とも同じカタログなんですよ。

【岡】えっ?(笑)

【石川】この中から選んで下さいという感じなんですよ。「ダメだこれ」と思って今度メーカーに問い合わせました。そしたら、「制服の代理店があるので直接販売できません」って言われました。「だったら、もう自分で作っちゃえ」となったんです。で、自分で作ろうと思ったんですけどわからないので、知り合いの糸を作っているおじさんを呼んだんです。糸から行ってやろうかなと思って(笑)

【岡】制服作るのに糸から攻める(笑)すごいね。

【石川】で、糸についてレクチャーしてもらったんですよ。そこから「やっぱり自分たちで作るべきだ」って、その時に「(デザイン)コンペやろう」ってみんなで考えたんです。それで、生地から購入して縫製工場にデザイン案出してやったんですけど、最初はわからないので、東レに飛び込みで電話して「実は困っているんです。制服がすごく大事なんですけど。」と熱い思いを話したら、東レの人たちが感動してくれて、「やりましょう、一緒に」となりました。
ただ、制服のver.1は不評も多かったんですよ。見た目はいいんですけれど生地が厚かったりとか。意見を取りまとめ、生地、動きやすさ、機能を考慮しver.2を今春配布します。2年に一回ぐらい更新して反映させていく。「いいやつをどんどん、自分たちで作っていこう」という流れであの制服はできました。

香東園が実践する、エビデンス・ベースド・介護

【岡】この間、数か月で利用者さんのオムツが外れた話を聞いたんですが。

【石川】数ヶ月もかからなかったです(笑)
今回は花王と共同で研究させていただいているんですが、『オムツセンサー』といって、オムツパットみたいなものがセンサーになっていて「いつ出たか」がわかるんです。今までのやり方では、その人の排尿パターンを掴むには人も時間もかかりました。実際『オムツセンサー』をやってみると、この人は夜中何時に出るのかがわかる。その時間帯に起こして誘導すればスムーズにオムツが外れていく。別な地域と2名のご利用者で試験的にさせてもらったんですけど、いずれも一か月かからずでオムツが取れました。

【岡】へぇ。『オムツセンサー』は、ICチップみたいなのが入っているんですか?

【石川】そうです。『オムツセンサー』はどう傾いているかもつけている間ずーっとデータが取れるので、どういう動きをした、この時は寝てるだろう、というのも同時にわかります。そこで本当にオムツ外しだけじゃなくて全体的なケア。「この人意外と寝ていないわ」、「お部屋の中でずっと起きてられる」というのがわかると、どうしていけばいいか考えますよね。
今までは客観的なデータが少ないから、その人の本当の個別性の介護を追求しようとした時に、わからないんですよ。こっちが「わかった」と思っているだけ。でも、「今日は睡眠が取れてるからリハビリしても疲れないよね」とか・・・

【岡】なるほど。『エビデンス・ベースド・介護』ですね。

【石川】そうですそうです。そこのところが今まで足りなかったなと思いましたね。『根拠がある介護』。実際の中でどういうことが起こっているかデータがもっと欲しい。「在宅復帰、在宅復帰」と言われますが、そこまでしっかりと介護施設でベースがわかっていると、帰ったときに家族が助かるわけですよね。2時と4時にトイレだとか。

【岡】すごいな。実際、オムツが外れたあとの利用者さんの変化は?

【石川】もう全然違います、表情の変化がものすごく違いました。取れてから表情がすごく豊かになる。実際、そのお二人にインタビューしまして、「元のパンツに戻れたことっていうのが生きている証拠や」と。しかも、早くできたら自信に繋がるわけですよね。私たちもスポーツジムに通って一ヶ月で成果が出たら、「お金払った価値あったわ」とか思いますもんね。

地域の施設に来ることが、いい世の中になるキッカケになれば

香東園やましな石川さん 【岡】ここまで石川さんの想いや香東園の取り組みを聞きましたが、「この業界もっとこうしようよ」みたいな意見があれば聞かせて下さい。

【石川】僕は、介護の制度をもっとより国民の手に委ねるべきだと思っています。
僕らのような社会福祉事業者からすると、介護報酬改定や予算のつけ方を見ると「今回は、ここに力をいれようてしている」と見えるんですが、非常にわかりづらい。だから、もっと一般の人にもわかりやすい社会保障制度にしなきゃ駄目だと思うんです。ちゃんと「介護は、このまま行ったらこうなるんだ」というのを認識しないと。

【岡】なるほど。でも、もともと介護に興味のない人たちがほとんどでしょう?本当は自分たちの身に降り掛かってくることを理解せず、10年・20年経った時に「おかしいぞ。蓋を開けてみたら。これもしかして20年前から決まってたの?」みたいになる。国民の理解にむけてどういう取り組みをすべき、みたいなことはありますか?

【石川】やっぱり、各全国の各地域に福祉施設がどこにでもある。なので、福祉事業者がまず自分の地域の人たちに少しでも施設のことを理解してもらおうという取り組みをすることが大事なんじゃないでしょうか。それもまた、地域貢献事業。施設のことを知ってもらうと、制度のことも知りますし、福祉のことも知るきっかけになるので。
例えば、うちの施設に来た大学生が次の日に電車の席をおばあちゃんに譲るようになったらいい世の中になるじゃないですか?そのきっかけを作るような施設に各施設が取り組むべきだと思います。 香東園やましな石川さん
<編集者の一言>
いかがでしたでしょうか?
「エビデンス・ベースド・介護」つまり根拠に基づいた介護です。香東園さんの取り組みは何が面白いって、こういった調査研究などを中心とした考え方と、アーティスティックでアナログな「人への探究心」を忘れないところだと思います。みなさんも、ぜひ「香東園やましな」さんに足を運んでみてください!高齢者施設とは思えない壁面アートがお出迎えをしてくれますし、敷地内にはお洒落なカフェまであります。見学でもボランティアでもいいです、現場にいきましょう、現場に。(岡)
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寄稿者

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岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)

介護のほんねニュース初代編集長。1981年 東京生まれ。3歳〜11歳までアメリカ・カリフォルニア州で生活。27歳で高齢者介護と障がい者支援の仕事を始め、29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立。近年は厚生労働省 介護人材確保地域戦略会議の有識者やNHK出演など多岐に渡る活動を展開中。(http://ubdobe.jp)