余命半年で「尊厳死」を選択した米29歳女性
昨年4月、29歳のアメリカ人女性ブリタニー・メイナードさんは、末期の脳腫瘍による余命半年の宣告を受けたことをきっかけに、激しい頭痛から逃れるために「尊厳死」をフェイスブック上で宣言しました。その後、尊厳死法が成立しているオレゴン州に夫と移住し、宣言通り11月1日に医師から処方された薬を飲んで亡くなりました。この件は日本でも話題になったため、記憶にある方も多いと思います。彼女は決して気軽に宣言したわけではなく、死にたくて尊厳死を選んだわけではありませんでした。そのような苦渋の決断に至るまでのインタビューやコラムも、アメリカのメディアでは大きく取り上げられたこともあり、全米で彼女の尊厳死について大論争が沸き起こりました。ある世論調査では、約70%の人が痛みのない形での安楽死を認めているという一方、宗教的に自殺を認めないカトリックの反対意見もあり、議論が広がりました。
出典:http://www.j-cast.com/
米国と日本では「尊厳死」の意味が違う?
ただし、ここでまず注意が必要なのは、米国と日本では「尊厳死」が指す意味が異なるということです。米国 | 日本 | |
---|---|---|
医師による自殺幇助 | 尊厳死 | 安楽死 |
不治かつ末期の際に、必要以上の延命措置を拒否し、人間の尊厳を保ちながら死を迎えること | 自然死 | 尊厳死 |
メイナードさんは意思から処方された薬を飲んで亡くなっており、医師からの投薬による自殺幇助となるため、米国では「尊厳死」、日本では「安楽死」に該当しますね。
そして、法制度の観点で見ても、欧米と日本との間には大きな違いがあります。
米国における「尊厳死」= 日本における「安楽死」は、
一方、米国における「自然死」= 日本における「尊厳死」は、
となっており、日本では生前の意思表示に基づく「尊厳死」についての明確な法律がありません。
米国 | 英国 フランス |
日本 | |
---|---|---|---|
医師による自殺幇助 | △ 一部の州で法制化 |
× 違法 |
× 違法 |
不治かつ末期の際に、必要以上の延命措置を拒否し、人間の尊厳を保ちながら死を迎えること | ○ 法制化されている |
○ 法制化されている |
? 法制化されていない |
そのため、日本では生前の意思・リビングウィルを残す方も少なく、また、残していたとしても法的根拠がないため、意思疎通できない状態になってしまった方は、医師とご家族の判断で延命措置が行われるケースも珍しくないようです。
出典:http://www.fsight.jp/
看取りと安楽死は別
看取りと安楽死を混同して考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし両者はまったくの別物です。看取りは人生を全うするために最期まで医療措置などを施したうえで亡くなられるのを、見送ることです」。途中で延命治療を諦めるわけではありません。介護施設によっては看取りに対応可能なところも多くあります。最期の瞬間まで安心できる施設で暮らしたいと考えられている方も多くいらっしゃるのが現状です。
介護施設の詳しいサービス内容や費用などに関しては以下の記事をご覧ください
介護付き有料老人ホームとは|はじめに確認する基本的な情報をご紹介住宅型有料老人ホームとは|特徴・費用の目安などの基本情報を紹介
健康型有料老人ホームとは|費用・特徴など基本情報を紹介
【専門家が徹底解説】グループホームとは|認知症への対処・費用の目安を紹介
サービス付き高齢者向け住宅とは|費用・入居条件・人員基準などを紹介
特別養護老人ホームとは|入居条件・費用・有料老人ホームとの違いなどを紹介
介護老人保健施設(老健)とは|費用・法的な特徴・特養との違いを解説
【専門家監修】介護医療院とは|施設・人員基準などをわかりやすく解説
シニア向け分譲マンションとは|はじめに知っておきたい基本情報を紹介
あなたは法制度化についてどう思いますか?
介護と死に関する問題はさまざま生まれています。2006年には京都伏見で在宅介護の苦労の末に、当時54歳だった息子が認知症の86歳の母親をあやめてしまうという悲しい事件が起こりました。苦労に絶えきれず加害者の方が心中を決意しており、自分も死のうとしたものの、失敗をしていまい、逮捕されたという経緯でした。在宅介護のストレスがかかってしまうと、思わず「死」を考えてしまう場合があることだと思います。周りの人と協力することで負担を最小限にすることは必要です。しかし、安楽死や尊厳死がもし日本で認可されていたら、親子は選択したのだろうか、といったことを思わず考えてしまいます。
在宅介護に関する詳しい内容は以下の記事をご覧ください
在宅介護とは|サービスの種類や実態・費用・支援センターの概要など在宅介護と施設介護を徹底比較|負担・費用・快適さ・安心度など
日本における尊厳死の法制度化は、日本尊厳死協会などを中心にかなり昔から議論されており、2014年の通常国会でも「終末期の医療における患者の意思尊重に関する法律案」(いわゆる尊厳死法案) の審議入りを進めていましたが、持ち越しとなったようです。その要因の1つとして、「尊厳死法」がないと本当に困るという人がそれほど多くなく関心が低い、というのがあるとも言われています(※)。実際、日本尊厳死協会のwebサイトで公開されている会員数も、2008年頃からは伸びが鈍化し、ここ数年は12万人で横ばいとなっているようです。
また、反対意見を強く表明する団体も多く存在します。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者らでつくる「日本ALS協会」もその1つです。尊厳死の定義として「不治かつ末期」というのがありますが、ALS はまさに根本的な治療法が見つかっていない難病です。行き過ぎた延命治療を断る権利としての「尊厳死」ですが、それが法制度化され過度に広まってしまうと、「生きたい」と思っているのに治療法がない難病の方にとっては延命措置を受けづらい世間の風潮が生み出されるのではないか、結果的に「尊厳死」を選ばされてしまうのではないか、という危機感を持つのは理解できます。
みなさんはどう思われますか?
-
関東 [1763]
-
北海道・東北 [154]
-
東海 [373]
-
信越・北陸 [80]
-
関西 [761]
-
中国 [79]
-
四国 [44]
-
九州・沖縄 [164]
この記事の寄稿者
まーしー
介護のほんねニュースライター。とある町の公式キャラとの情報もあるが、定かではない。