寄稿

介護で今なにが起きているのか?介護職の賃金・待遇改善の動き まとめ【2015年3月版】

今月新たに黒字の事業者ではボーナスカットを禁止することが決まりました。改めて今進んでいる動きについてまとめます。

介護職の賃金

介護業界の中で最大の課題である介護職の賃金・待遇

介護を取り巻く環境は、さまざまな問題を抱えています。その中でももっとも大きな議論を呼んでいるのが、介護職の賃金・待遇。これから介護のニーズはますます高まりたくさんの介護職が必要とされているものの、介護職の給与は平均的に見ると決して高いものではありません。実際、7割の人が不満に思っているというデータも出ています()。賃金が不満で離職につながる人が多くいると言われています。
こうした賃金・待遇について今進んでいる国の動きと、私たちがこれから考えていかなければいけないことについてまとめてみました。

国が進める介護職の賃金・待遇改善の動きとは

介護職の賃金・待遇がどのように改善されようとしているのか、順を追って解説していきましょう。

介護報酬改定
介護職の賃金問題を語るうえで必ず注目されるのが、介護報酬改定です。詳しくはこちらの記事で解説していますが、介護が必要な人が増え続けている中、国としては財源が足りないという状況から、介護事業者にとっての収入である「介護報酬」を引き下げることになりました。

処遇改善加算の導入
一方、「処遇改善加算」として介護職員の賃金を平均で月1万2000円アップできる財源を確保しています。つまり、少ない財源であってもしっかりと介護職へ賃金が回る仕組みにしようとしているのです。しかし、この加算は月額賃金を対象としていたため、事業者によってはボーナスをカットすることで実質的には賃金を引き下げるのではないかと懸念されていました。

黒字事業者へのボーナスカット禁止
そこで厚生労働省は3月17日、黒字となっている介護事業者に対してボーナスカットを禁止することを決定しました。

このように、国ではさまざまな対策が実行されています。では、介護職として、もしくは、利用者としては、この流れをどう捉え考えていくとよいのでしょうか?

介護職として考えておくべきことは?

目の前のケアで精いっぱいで、「賃金が上がればいいのに」「上げてほしい」といったことまでは考えても、「なぜ賃金が低いのか?」「どうしたら上がるか?」という視点で考えている人は、まだあまり多くないかもしれません。こうした問題は介護職ひとりひとりの人生設計にも影響しますが、これから先、介護を必要とする人すべてに影響するともいえます。
まずは「なぜ賃金が低いのか?」を思いつく限り書き出してみると良いのではないでしょうか。どうも多くの人は原因を一つに絞りたくなりがちです。でも、いくつかの原因が複雑に絡んでいるからうまく解決しないで長年過ぎているのです。

例えば、こうした問題をほかの産業で議論する際にも良く言われる「収入を増やすか、支出を減らすか」という視点で考えてみたとします。

収入を増やす
  • 利用者からの収入を増やす
  •  【国の動きの一例】2015年8月以降、利用者の経済状況によっては介護保険費用の自己負担を2割とすることが決まっている
     【事業者の動きの一例】さまざまな価格帯のサービスを展開することで、高収益を上げられる事業所で事業全体を支える構造にするところが出てきている

  • 利用者以外(主に公費)からの収入を増やす
  •  【国の動きの一例】介護だけでなく社会保障費全体の増大に備え、増税、経済対策、などを実施・検討している
     【事業者の動きの一例】利用者のニーズの実態に沿った形で無駄なく助成制度が整うよう、一部の事業者が国や自治体などに働きかけている

    支出を下げる
  • 人件費に相当するコストを下げる
  •  【国の動きの一例】海外からの労働力を入れる動きがあるが、海外の経済状況や円安などの背景もあり、議論が続いている
     【事業者の動きの一例】テクノロジーの活用などで少ない人数でも手厚いケアができるように試みているところもある

  • それ以外のコストを下げる
  •  【国の動きの一例】そもそも介護が必要な人を増やさないよう介護予防に取り組んでいる
     【事業者の動きの一例】長期に働ける正社員を増やすことで採用コストを抑える事業者が増えてきている

    ここに書いたものはあくまで一例ですが、このように書き出してみると、まだまだできることがたくさんあること、個人単位でできることもあることが見えてくるのではないかと思います。

    利用者として知っておくべきことは?

    大切なことのひとつに、介護にはどれくらいお金がかかっているのかを知っておくということがあります。知らず知らずのうちに余計なコストを掛けていたり、必要な費用を支払っていなかったりすることがあるからです。
    実は、自分たちが利用している介護サービスが本来いくらするものなのかよく理解していない人がほとんど。
    例えば、過剰な介護サービスを利用してしまい必要以上に介護費を掛けている人がいます。プロが立てたケアプランに沿ってプロが看てくれているんだから大丈夫、と思っているうちにどんどん不必要な介護サービスを利用していくことに。残念なことに、そうした状態に誘導して高い介護費を得ようとする事業者もいないわけではありません。こうなると自己負担額が高くなることはもちろん、それによって国民全体の負担も高めてしまっているのです。
    逆に、自己判断で「このサービスは必要ない」と決めつけてしまって本来の適切な介護費を支払っていない人もいます。たとえ寝たきりだとしてもなにもしないわけにはいきません。そうなると結果的に職員にボランティアで動いてもらってしまっているケースもあります。「家計が節約できた」「ここの職員は親切でありがたい」なんて言っていると、介護してくれる人がどんどん減ってしまうかも。
    つまり、サービス内容とその費用についてある程度の知識を持っておき、利用者として適切な価格で利用するということ。
    なにもひとつひとつのサービスごとの金額を覚えておく必要はありません。入浴介助であれば大の大人を入浴させるのだからそれなりの人手が必要だろう、くらいのイメージができるかどうかが、今後も介護サービスを受けられるかどうかを決めていくのです。

    ご意見募集中!

    介護のほんねニュースでは引き続きこうした賃金・待遇改善の動きを取り扱っていきたいと考えています。
    ご意見やご要望がありましたらぜひコメントをお寄せください。
    横尾千歌

    この記事の寄稿者

    横尾千歌

    介護のほんね」ディレクター。介護の用語や介護関連の仕事のこと、高齢者向けの住宅事情など、今まで縁遠かった人でも読みやすいよう図や絵とともに情報を発信します。

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