色でその人の物語を引き出す彩色ケア「色カルタ・クオリアゲーム」三浦南海子さんインタビュー

認知症 , 色カルタ・クオリアゲーム , 彩色ケア
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2015.03.31
色カルタ パーソナルカラリストで彩色ケア・色カルタ研究所を主宰する三浦南海子さんに、色カルタができたきっかけやカルタ中のエピソードなどをお聞きしました! 三浦南海子さん ―パーソナルカラースタイリスト 彩色ケア・色カルタ研究所主宰 三浦南海子さん

本職はパーソナルカラリスト。ある医師との出会いで介護に色を活用することを考えだす。

【中浜】どんなきっかけでこの色カルタを作ったんですか?

【三浦】きっかけは、介護・僻地医療の第一人者折茂賢一郎先生との出会いですね。私の本職は、顔色を良く見せる色(似合う色)を提案したり、その技能や応用を広めることですが、数年前、群馬県介護支援専門員協会総会でパーソナルカラーの話をさせてもらいました。ケアマネの方々はふだん忙しいからその時間だけでも楽しませてほしいということで、それは盛り上がりすごく喜んでもらったのです。
その時先生から「色は素晴らしい。なにかうまく使うことで介護の技術になると思う。それにはまずは私たちが色があることに気づくことが大切。それを一緒に考えましょう。まずその気づく方法をあなたは考えて」と言われて、それから考え始めたの。で、10ヶ月くらいかな、毎日毎日ずーっと考えました。

【中浜】結構大変だったんですね。

【三浦】はい、本当に毎日考えていた。それこそ朝起きてから夜寝るまで毎日毎日。それで私にはもうとても考えつかないとあきらめた頃、「なにか色を使ったゲームがあればいいな」とある人の一言を聞いたその瞬間「あっ」と考えつきました。私達がふだん使う配色カードっていうのがあるのだけどあれを見るとみんな嬉しそうな顔をするのね。だからこれを使ってなにかできるかもしれないと思いました。
それから、色々な介護施設に行って見学しました。想像していた以上に部屋はきれいで明るくて、食事も大変美味しそう。けれど、その環境では自分で決めるという選択肢がなくて押し込められてるように思ったのね。だから、なにか自分で選んでいくようなもの、それからお話しできるなにかを考えようと思って考えついたのがこれ(色カルタ)です。
そして、宿題を出した折茂先生とゲームの方法を工夫して、数か所の施設で手作りの色カルタで実施してもらい、それから出版しました。
実は、折茂先生は母が以前大変お世話になった方です。その先生と共に彩色ケア「色カルタ」を考案できたのは、私は今認知症にかかっている母からのプレゼントと思っています。

例えば、段差に見える床の色。色を意識すると、もっともっと過ごしやすくなる。

【三浦】中浜さんのところ(デイサービス)でランチを食べるところ、光は何色?

【中浜】白いほうですね。蛍光灯。

【三浦】ごはん食べる時に、蛍光灯と電球色でどっちがおいしそうに見えると思う?

【中浜】電球色のほうですか。

【三浦】そう、電球色のほうがおいしく見えるんですよ。というようなことも意識してほしいの。スーパーに行ってお肉やお刺身があるところの光を見ると電球色なのよ。

【中浜】へー、ちょっと見てみよう。

【三浦】そう、見てみようって思うじゃない? 色は情報を入手したり判断する際に重要な要素なの。
例えば施設の中で「いつもここで転ぶ人が多いな」っていう場所があるとします。よく見てみたらそこだけ床の色が違っていた、とか。
例えばフラットな床でも、ここから廊下ですよと居室と区別をつけるために色をベージュとか茶色に変えることがあるとします。でもお年寄りの眼からみると色そのものより、明るい色・暗い色という明るさの差をより感じて段差があるように見えてしまう。だからそこで転んでしまう。そんなことも意識してもらうと、もっともっと生活しやすくなる。介護現場に色を利用するきっかけにもなればいいなと思って「彩色ケア」と名付けています。

選んだ色に浮かぶ映像を拾っていく。それが色カルタ。

三浦南海子さん 【中浜】この色カルタの遊び方というのは?

【三浦】まず色カードを並べます。そして読み手(リーダー)が読み札を読みます。参加者はそれを聞いて何か連想した色を取るの。読み札は何でもよいのですが、例えば「『子どもの時』ってどんな色?」と聞きます。
中浜さんだったらどんな色取ります?

【中浜】黄色かな。

【三浦】なんでこの色ですか?

【中浜】活発に、外で遊んでいた記憶がすごくあるから。

【三浦】すごく想像できる(笑)なにして遊んでたの?

【中浜】サッカーしたり、運動していることが多かったですね。

【三浦】・・・って聞くと、私は中浜さんが子どもの時の一心不乱に遊んでいた想像がつくし、中浜さんも、今は若いから覚えているかもしれないけど、年を取ったら子供の頃忘れているかもしれないでしょ。
でも、いつもひなたぼっこしてるおじいちゃんがサッカー好きだっていう情報が入れば「じゃあ今度一緒に見に行こう」とか「デイケアの中で今度、ボールを蹴る種目を入れよう」とか、この人をより知ることができケアの工夫ができる。そうするとおじいちゃんの方も「おれのことを知っていて、いい青年だ」ってなるかも。信頼関係ができるきっかけになる。

【中浜】あくまでも「色カルタ」というのは色を選ぶまでが入口で、そこからその人と向き合うのがこのゲームの大事なところなんですね。

【三浦】そう。だから何色を選んでもいいの。10人いたら10通り、100人いたら100通りいろんな色があるし、いろんなイメージがあるから。
あと、よく「回想法と同じですね」って言われるけど、懐かしいと思うことだけじゃなく自由に発想できる。例えば「中浜さん、今年の色はどんな色にしたい?」と。そしたら回想法よりもっともっと自由ですよね。

【中浜】カードを選んでもらってそこからお話がどんどん広がっていきますね。

【三浦】さっき中浜さんが黄色を取った時、中浜さんの中には映像があったと思うんです。その映像を聞いているだけなの。

【中浜】一番大事なのは、リーダー役の人が決めつけないで、相手の頭の中にある物語を拾うこと。色で判断しないっていうことなんですね。

【三浦】はい、全くその通り。もう一つルールをいえば、「相手に関心を持って相手を知りたい」ことが目的。で、ゴールは「あなたと私の信頼関係を結ぼう」です。

介護する側も、その人に関心を持ったらもっと頑張ろうって思えるはず。

【中浜】相手に感心を持っていると、なんでその色を選んだのか、その色の意味は、とかやっぱり聞きたくなる。逆に関心がないと、例えば取ったカードが白だったらただ「白は牛乳ですね」と勝手に自分の想像の中だけのことで終わっちゃいますね。

【三浦】 決めつけて割り振るものじゃなくて、その人を見てその人を大切にケアしていく。介護って、そういうものでしょ?よく「その人のための介護」って言うけど、どうやってその人を知るのでしょう?私の認知症の母も、一緒に住んでいたのは40年くらい前だし、それからのことも今のことも全然わからない。まして私が生まれる前どんなことを考えていて何をしていたかも良く分からない。そういう時本人が自分はこうやりたいとかこういう過去を持っているっていうことを本人が言ってくれるというのは、ケアをする上でいいヒントになると思う。

【中浜】介護職からしても、ただの利用者さんじゃなくて、大切なお客さんに変わる過程になるような気がしますね。

【三浦】「やらされてる感」がなくなっていく一つのステップになると思う。介護職で「面白くない」っていう人がいるでしょ。別に介護職でなくても仕事が面白くない人はいっぱいいる。でも、どんな仕事でも面白く思っている人には、関わりとか興味とか、そういうものがある。介護職はまして人間相手だから、その人に関心を持ったらもっと頑張ろうって思えるかなと。

寂しかった子ども時代の思い出、大好きなお父さんの思い出・・・色でその人の物語が聞ける。

【中浜】色カルタをやっていてなにかエピソードはありますか?

【三浦】ある特別養護老人ホームでの話、いろんな方がいる中でちょっと嫌われているおばあちゃんがいてね。理屈っぽくて突っかかってくるし、ひがみっぽい。で、ご家族からも「うちの母は性格がねじれている」って言われていて(笑)。私はそのことを知らないでその人と色カルタをしたの。
「子どもの時の色はどんな色?」って聞いたら、ずーっと考えて、で、黒を取ったんです。一緒にしていた介護スタッフ、暗い色を取ったから「やっぱりね」って見ていたらしい。私が「黒って何の色?」って聞いたら、「石の色だよ」っていうの。だから「何で子供の時の色が石の色なのですか?」と聞くと・・・「母が早くに亡くなり、親戚に転々と引き取られ小学生の時からあっちこっち移り住んで引っ越したので、友だちがいなかった。だから遊ぶ時はいつも川に行って、石をひっくり返すと虫がいっぱいいた。その虫と遊んでた 」って。

【中浜】ちょっと悲しいですね。

【三浦】ねぇ。その虫といつも遊ぶ、そういう子ども時代だったって聞くと、私も寂しいなぁって思う。一緒に聞いていた介護士のお兄さんも「そんな寂しい子ども時代を過ごしていたんだ。ならひがみっぽくもなるわな。ちょっと優しくしようかなって思った」って。

【中浜】たしかにそれなら最後は楽しく優しく、光の中で過ごしてもらいたいって思うかもしれないですね。

【三浦】そう、素晴らしい中浜さん!大切にしたいな、とか、ちょっといじわるされてもしょうがないな、って思えるじゃない?そうすると相手もだんだん「このお兄ちゃん、なんだか私をいつもも受け止めてくれるな」って思う。こちらもそれがわかる。通じ合えますようね。
それからもう一例。認知症で不安感が強い人に「風の色はどんな色ですか?」って聞いたことがあったの。そしたら緑を取ったから「なんでこの色?」って聞いたら、「窓から外を見ていて風で木がすごく揺れていたから、ああ今日は風が強いのね、だから風の色は緑」ということでした。いつもは不安感がすごく強い人ですけど、その時はニコニコしていたので「すごく嬉しそうですね」って聞いたら、「私のお父さんね、小さい時にいつも、庭で木の手入れをしていた。今、風に揺れる葉っぱを見ていたらお父さんのこと思い出したの。だからとっても嬉しい」って。その方お父さんが大好きで、お父さんのことを思い出すと嬉しくてしょうがなかった。不安感が強い人が一瞬でも思い出して喜んでいる。よかったなあ、と忘れられない一枚です。
その人一人ずつに人生の物語がある。登場人物がいっぱいいて、いろんな物語が聞けるから面白いんです。物語を生で語ってくれるから私はやめられないんです。

なんでも聞ける色カルタで、小学生でも、日本中ハッピーに。

【中浜】これから色カルタをどうやっていきたいですか?

【三浦】今の小学生って、カルタ取りしたことないんですって。だから小学生たちでも「色カルタしよう」と言えばできるようなものにしていきたいです。色カルタは早い者勝ちじゃないし答えがいっぱいあるし、そして正解はないし、色々聞ける。みんな同じ価値観を持っているとは限らないけど、その中で協調できるようになればと思っています。別に認知症じゃなくても、ひとりで寂しく「俺なんかどうでもいいや」って思ってる人だって、話を聞いてもらったら嬉しいだろうなって。日本中で自分の話をして楽しく聞いてくれる人がいたら、みんなハッピー。だからなんとか広めていきたいです。そんな小学生がリーダーになって認知症のあるお年寄りと同じテーブルで色カルタしているのって素敵ですよね。そして中浜さんみたいな良いリーダーがたくさん生まれてほしいと思っています。

彩色ケア「色カルタ・クオリアゲーム」について

色カルタ・クオリアゲーム
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  • 編集者の一言
    色を選ぶという入り口からその人を知ることができる。間違えがないので、子供でも大人でも誰でもがゲームとして楽しんで行うことができるものだと思います。出会いの場でも盛り上がってしまう可能性もあるのではないでしょうか。
    色を選んでいただき、「なぜその色なのか?」という視点。聞き手の固定観念はなし、さらに「答えは全て相手の中にある」ことを意識することでコミュニケーションをとるというのは介護ではとても重要なことだと思いますし、人とのコミュニケーションをとっていくことでも、とても大切な視点ではないでしょうか。それが遊びを通して身につくなんて、ぜひ体感していただきたいと思います。(中浜)
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    寄稿者

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    中浜 崇之

    二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/