介護難民問題、地方移住だけでなく人材減少に依らない総合的な戦略を

2025年問題 , 介護難民 , シルバーリング , 東京都 , 2040年問題 , 介護移住
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2015.06.05
介護難民と介護移住

ようやく伝えられるようになってきた介護難民問題

6月4日に日本創成会議による「東京圏高齢化危機回避戦略」の記者会見が行われたことで、介護難民に関する報道が一気に熱を帯びました。でも、介護難民という言葉を初めて聞いたという人も多いかもしれません。そしていきなり介護移住の話が出てきたので寝耳に水だという地方に住む人の声も聞こえてきそうです。
介護難民とはどんな問題なのでしょうか? これまで介護のほんねニュースでお伝えしてきた情報をまじえながら、まずは状況を整理していきましょう。

押さえておきたい介護難民問題とそれに関連する課題の数々

  • その1:増える介護難民http://news.kaigonohonne.com/article/324
  • 高齢化率25%を超える超高齢社会となった今、介護を受けたくても受けられない人たちが増加している


  • その2:2025年問題http://news.kaigonohonne.com/article/424
  • いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には介護難民の数がピークを迎える見通し


  • その3:大都市近郊におけるシルバーリングの出現http://news.kaigonohonne.com/article/371
  • 東京や神奈川、埼玉、千葉など、高度経済成長の時代に団塊の世代を中心に人口が増えたエリアほど介護難民が増えてゆく


  • その4:地方への介護移住の可能性http://news.kaigonohonne.com/article/460
  • 都市部で支えきれなくなった介護需要に対し、介護を受けるための地方移住が注目されてきている


  • その5:2040年問題http://news.kaigonohonne.com/article/424
  • 日本の高齢者人口は2040年を過ぎたころから減少すると見られるが、この頃は人口減少により自治体ごと消滅する地域がでることが予想される


    大まかに捉えると、以上のようなことが現在そして未来の日本の抱える介護難民およびそれに関連する課題となっています。スピーディーに伝えられる報道ではいまいち状況がつかめなかった方もこれで少しは把握していただけたでしょうか。
    では、こうした介護難民問題に対して、我々はどのような対策をしていかなければならないのでしょうか?

    地方移住だけでなく、人材減少に依らない総合的な介護戦略を

    今回の発表に対し、各種メディアではとりわけ地方への介護移住がクローズアップされています。ですが、日本創成会議ではそれ以外にも非常に重要な指摘をしています。それが「人材依存度を引き下げる構造改革」です。

    繰り返しますが、日本は今、高齢者が増え続けています。若者が足りません。日本中あらゆるところで介護が必要な人と介護できる人の絶対的な数が合わないのです。しかも若者は全員が介護に携われるわけではありません。ほかの産業や教育などに携わる人を削るとそれこそ日本全体が回らなくなります。
    となれば、「介護できる人が足りない都心からできる人がいる地方へ」という介護移住がすべてを解決してくれる方法ではないことがお分かりいただけると思います。たしかにこれほど都心に人口が集中している状況は健全ではないので、介護移住という選択肢が前向きに議論されるのはよいことです。しかし、人材の数に依存するという構造そのものを変えていかない限り、介護難民問題が都心から地方へ移動したにすぎない状況が続くでしょう。

    そこでやはり積極的に考えていきたいのが、ICTやロボット技術の活用、資格統合や人材配置条件の緩和など、少ない人員で介護を支える構造作りです。これまでも介護のほんねニュースでは介護業界で進むこうした取り組みをお伝えしてきましたが、介護業界で働く人の中には変化に対して抵抗感を持つ声も多く聞かれました。
    こうした技術革新や資格要件の変化を聞くと、「自分の仕事が奪われるのではないか」「せっかく取った資格が活かせなくなるのではないか」という不安を抱く人もいると思います。もしくは「これ以上現場から人が減ったらどうすることもできない」と感じる方もいるでしょう。そう感じるのはもっともですが、介護業界で働く人ほど未来に目を向け、どうすれば乗り越えられるか思考していくことが大切です。また、介護業界で働く人のそうした不安を受け止め、うまくいった事例の展開など介護業界をサポートする仕組みが発達していく必要があります。

    介護難民問題は、これから起きること、ではなく、今まさに起きていること。

    介護難民問題について、ひとつ、意識を改めなければならないことがあります。それは、介護難民は2025年など今言われている近未来の課題なのではなく、現在進行形で起きている問題なのだということ。すでにたくさんの方が実際に介護を受けたいのに受けられない難民状態です。2025年という数字は、今後こうした人がさらに増えるということを示しているだけで、今は安心という意味ではありません明日あなたが当事者になるかもしれないことなのです。

    「なんとかしていただきたい」で済む事態ではない。

    また、こういった報道を聞くと「誰かなんとかしてほしい」と思う人が多いのではないかと思います。
    でも、なんとかするのは誰でしょう? 国? 自治体? 介護業界? 若者?
    どうせどうにかなると思わず、ひとりでも多くの人にこの危機感を自分ごととして捉えて介護の情報に目を向けていただきたいと思います。また、介護のほんねニュースでもこうした状況を多くの方がわかるよう、今後も情報を発信していきたいと考えています。

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    寄稿者

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    横尾千歌

    介護のほんね」ディレクター。介護の用語や介護関連の仕事のこと、高齢者向けの住宅事情など、今まで縁遠かった人でも読みやすいよう図や絵とともに情報を発信します。

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