男性が介護するということ

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2014.11.18
男性が介護するということ

男性介護者の苦悩の末路

介護を苦に無理心中や要介護者の殺人を犯すのは、男性介護者が圧倒的に多いと言われています。

男性介護者の中では有名な事件があります。
2006年2月に京都で起きた無理心中(母を殺害)事件。
認知症の母親と2人暮らしだった男性は、母親の認知症の症状が進み仕事をしながらの介護に限界を感じた息子さんは仕事を辞める。
仕事を辞めた息子さんは、失業保険の受給期間が終了した時に、生活保護の申請をするが、働ける年齢であることなどを理由に、給付を断られた。その後カードローンの借り入れなどの借金も膨らみ、自分自身の食事を日に1回に減らし母親の介護を続けていたが、ある日家賃の支払い期限がやってきた。
3万円の家賃が払えなくなった。そしてその日は親子で住んでいる京都の町を歩き、鴨川の河川敷で車椅子に乗った母親に「もうお金もない、生きられへん、これで終わりや」と話しかけ、泣いている息子に母親は「もう泣かんでいい」と「お前はわしの息子や、自分で死ねないならわしがやったる」と言い、息子は母親の首をタオルで絞め、ナイフで首を切った。
参考:http://www.kyoto-np.co.jp

ほかにもこうした痛ましい事件のニュースにはとても胸を打たれます。
介護疲れで無理心中か 母親殺害容疑で次男を逮捕 墨田区
参考:http://www.caretomo.com

介護疲れ増える悲劇 越前市の夫婦無理心中か
参考:http://www.yomiuri.co.jp

なぜ、そのような事件を男性介護者が起こすのか。そしてどうしたらこのような悲劇を防げるのでしょうか?

男性介護者の多くは、家事すらしたことがない状態から始まる

実は男性と女性の環境に大きな違いがあります。

多くの女性介護者の場合、子育てを経験しています。
たくさんの愛情と手間をかけて子供を育てる中で、お母さんたちは時には上手く時間を活用し、自分の時間を作ることもあれば、少し息抜きをする時間も作ります。もちろんケガをしたり、熱を出せばすぐに病院に連れて行き、献身的な看病もするでしょう。
女性の場合は、そういった経験が介護に活かされている場面が多いのではないでしょうか。

一方で男性はというと、多くの人は一日のスケジュールを立てて職場やそれ以外のところで仕事をこなす毎日を送っています。今日は何の仕事があり、どのアポイントがあり、何時までにどの仕事を消化し・・・と日々のスケジュールに基づいて仕事をこなしています。

それを介護の場面に置き換えると、多くの男性介護者は毎日のスケジュールを組み、そのルールに沿って介護を行うケースが多いように感じます。朝起きて食事を作り、着替えを手伝い、食事介助を行って、片づけて買い物に行き、またお昼ごはんを作る・・・
そんなスケジュールを自分に課して日々を過ごそうとする傾向が強いです。

女性の場合は(全てとは言いませんが…)毎日の家事の中で、時間と手間を調整しながら介護をされている方が多く、比較的男性より上手くされる方が多いのではないかと思います。

ところが男性にとって介護というのは、何をすればいいのかさえわかりません。
団塊の世代と言われる方から上の年代の方の中には、台所に立ったことすらないという方も多いのではないでしょうか?
タンスやクローゼットの中のどこに、何が収納されているのか?印鑑や通帳の場所は?毎月の支払いはどこに、どうやっているのか?
そんな普段の生活のことが何もわからない。そういうところから、男性介護者の日常がスタートします。

母の下着を買わなければいけなくなった日のこと。

今の若い人達は、彼女の下着を一緒に選んだりするカップルも多いようですが、40代以上の男性が妻や母の下着を買わなければいけない状況になった時、彼らの精神的苦痛はいかほどの物か?

実際に私自身が実母を在宅介護していた頃に、同じような状況になったことがあります。
今まで持っていた下着をボロボロになるまで使ってしまい、新しい下着が必要になった時に、スーパーの女性下着売り場の前まで行ったことがあります。

でも結果は下着売り場の中を通り過ぎただけでした。
正直売り場に並べられている女性物の下着を手に取ることさえできませんでした。

母の洋服を買おうと出かけた時でも、結局はどんな洋服を選べばいいのか、サイズはどうなのか、そんな事さえわからずその時も洋服を買うことができませんでした。
私の場合はその後、親戚の従妹に頼んで母の下着や洋服を買ってもらったりしましたが、これが頼る人が居なかった場合、介護者の男性は勇気を出して、店員さんに声を掛けて事情を説明し購入するしか方法はありません。

母のオムツを交換する。

また私もそうでしたが、介護度が進み寝たきりになった時、男性は妻や母の排泄の介助や、時にはオムツの交換をしなければなりません。

アカの他人であれば、仕事として割り切れるのでしょうが、それが自分を生んでくれた実の母のオムツ交換・・・
私の母の場合は、国の指定する難病に罹り、身体の運動機能が低下し、言葉も上手く話せなくなり寝たきりなってしまいましたが、頭はクリアの状態でした。そんな状態で、実の息子にオムツを交換される事、どれだけ恥ずかしく情けない思いをしていたでしょう。
また、私も初めて母のオムツを交換した時は心に大きなショックを受けましたが、その時は母に心情を悟られまいと、必要以上に大きな声で明るく、母に見られないように涙を流してオムツ交換をしました。

悲劇を繰り返さないために

冒頭で紹介したような事件は決して珍しいことではなく、男性介護者の場合は実際にこのような状況に陥ることが非常に多いと言えます。
核家族化が進む現代において、むこう三軒両隣のご近所さん同士で、近所のお爺ちゃん・お婆ちゃんの見守りをしていた昔の町の姿はいまの都会では見受けられなくなりました。そんなことも、介護を苦にした無理心中が起きる遠因になっているのかもしれません。

ぜひ一度、みなさんも近くに誰にも相談出来ずに介護を続けているご家庭がないか気にしてみてください。こんな悲しい事件が起こらないような国になってほしい、国にしたいと切に願います。

私も参加したことのある団体
  • 男性介護者と支援者のネットワーク
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    寄稿者

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    田中宏信

    (株)エイジプラス 東京支社長兼関東有料老人ホーム紹介センター主任相談員。介護施設の紹介業をしつつ、プライベートでは全国の被災地へ出かけてボランティアをしてます。

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