みんながベストを尽くせば社会は変わる!全国老人福祉施設協議会事務局長 天野尊明さんインタビュー

社会保障制度 , 全国老人福祉施設協議会
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2015.09.08
全国老人福祉施設協議会事務局長天野尊明さん

全国老人福祉施設協議会(全国老施協)で事務局長を務める天野尊明さんに仕事に対する想いや信念を聞きました。「人間同士の対話を大切にする」という天野さんの勢いある語りに注目です!

天野尊明さん 天野尊明さん
現在35歳。地元徳島の社会福祉法人健祥会を経て上京し、2年前から全国老人福祉施設協議会で事務局長を務める。

徳島の健祥会から東京へ

【岡】いきなりですが、天野さんって何歳ですか?

【天野】35歳です。10月で36歳になります。

【岡】衝撃的事実発覚。僕のひとつ上ですね。何歳から事務局長をされているんですか?

【天野】2年前の33歳からです。

【岡】若い事務局長ですよね。この立場に至るまでの経歴を教えてください。

【天野】大学を卒業した24歳のとき、地元徳島の社会福祉法人健祥会(徳島県徳島市)に入りました。中村博彦さん(元全国老施協会長、元参議院議員、介護保険制度に尽力し、2013年7月に70歳で逝去)が始めたところです。入ってすぐ、とある大きな仕事を任されたのですが、失敗してしまって干されたんですよ。

【岡】おっと、いきなりディープな話ですね(笑)。

【天野】半年くらい仕事がなくて暇な状態でした。
そんなとき、中村さんが全国老施協会長から参議院選挙に出馬し、当選(2004年)。「東京で誰か手伝ってくれるやつはいないか」という声が職場にかかったんですよ。「天野が暇しとる」「いすに座って毎日インターネットしとる」「エリック・クラプトンを調べとる」ということで、間違いなく暇だと認定された私が東京にお手伝いに行くことになりました。中村の付き人のような仕事をずっとしていましたね。
中村さんが倒れたのが2012年の10月。病床で「お前、事務局長やってくれよ」と言われ続けました。3回くらい断ったんですけど、結局引き受けました。そうして、なんもしない事務局長が誕生しました(笑)。

「知らないなら聞けばいいじゃない」知ったかぶらないポリシー

【岡】なるほど。えーと、インターネット時代……じゃなくて(笑)、健祥会では現場職だったんですか?

【天野】いや、総合職で入りました。かっこよくいえば幹部候補生。まぁ、単に大卒が入る先です。特に決まっているわけでもなく、いろんな役職を巡っていきます。そこからたまたま本部職員になりました。でも、介護もしたことがないし、現場も知らない。

【岡】現場を知らないっていうのは逆におもしろいですね。

【天野】わかろうとしないのが自分のポリシーなんです。本部の人間は、知ったかぶって「現場のために」とか言葉ではよくいいますが、究極的には現場の苦しみはわからないと思っています。だから、知ったかぶりをしないで、わからないことはちゃんと聞くようにしています。現場の知恵には僕ら以上のものが絶対にある、と原理原則として思っています。ひとりよがりにならんようにするためには、自分の無知というのをちゃんとわかっておかなければいけない。そういう信念を持っていたからこそ、今の自分が作られてきたのかな、と。

【岡】一般目線というか、業界の外の目線で見るということですね。

【天野】そうですね。はっきりいって、自分は外の人間だと思っています。

【岡】その徳島の健祥会時代から3年経った全国老施協事務局長としても、そのスタンスは変わりませんか?

【天野】変わりませんよ。だって、知らないから。

【岡】知らないって、結構困ることはないですか?

【天野】ないですね。だって、聞けばいいじゃないですか。
知っている人と仲良くなるのが大切なことだと思っているんですよ。介護でもいろんな人がいるじゃないですか。認知症が好きで研究しているんだという人、毎日おじいちゃんおばあちゃんと一緒にいるのが好きで、一緒に暮らしていること自体を大事にしている人もいる。いろんな人と会っていろんな話をして、この話だったらこの人に聞けばいい答えがもらえるなというのを繰り返すんです。わからんことがあったら、その都度その都度その人に聞いて、それで、その人の言ったまんま言う(笑)。だから、自分がわからないことで不便はしないんですよ。

信念はLOVE&PEACE !? 人間同士の対話で物事を決める

【岡】知っている人に聞きまくるんですね。現場以外には、役所の人や政治家とのやり取りが多いんですか?

【天野】政治家もマスコミも、ありとあらゆる人ですね。厚労省とは年がら年中会っていますね。特に厚労省は、最近あまり政治的にものを動かさなくなったんです。昔は政治家がドカンって動かしていたんですが、今は話し合いで決めるんです。最近、全国老施協は全面的に対話姿勢をとっているので、役所も対話を求めるようになってきました。
政治家にしたって、役所にしたって、マスコミにしたって、全員人間です。だからこそ、人間同士の対話で物事を決めたい。立ち位置が違うだけなんですよ。

【岡】めっちゃLOVE&PEACEじゃないっすか。

【天野】たまにPEACEじゃないけどね(笑)。

【岡】おもしろいなぁ。いろんな人と話せるというのは、介護の現場にいたらあり得ないじゃないですか。

【天野】そうなんですかね?

【岡】それこそ、物事を動かすような人たちと。

【天野】それは、話せないと思っているだけですよ。話そうと思えば誰とでも話せるんですよ、日本って。究極的には、安倍総理にだって会おうと思えば会える社会。それなのに、介護の業界は自分たちで勝手に制限してしまっていることが多いんです。
厚労省に会えないって介護業界の人がよくいうけど、それは本当に会いたいという気持ちがないから、自分でやめちゃっているだけなんです。本当に物事を変える気があるんだったら、会わないといけないんだったら、会う方法を必死に考えればいいじゃない。

【岡】なるほどなぁ。

【天野】おもしろいことに、人に伝える努力を精一杯続けていると、周りの人もそういう気持ちになってくれる。そういうのって、大事。
なんか、僕は団体というものに対してイメージが悪いんです。すぐ部屋にこもって会議をする。誰のためでもない会議をする。その会議で決まったことはどこにも出ない。かろうじてホームページに書類としてガサッとアップされる。無意味でしょ。

【岡】そういうの多いですよね。

【天野】そんなことよりは、一歩でも誰かに会う努力をする。そのために会議をするならわかりますが、何かを変えようとするのなら、そこで決まったことを誰かに伝えなければいけません。それができないなら、さっさとやめるべきなんですよ。だって、会員のみなさん(介護施設)も会議室でお茶を飲むためにおじいちゃんおばあちゃんからお金をもらっているわけではないのです。

語る天野さん

「ルールが人を変えるんやなくて、人がルールを変えなあかん」

【岡】全国老施協のモットーってなんですか?

【天野】中村さんが政治家として「現場の声が制度を変える」を掲げていましたが、それこそがうちのモットーだなと思います。
いまの骨太の方針で、財務省や経済財政諮問会議などは、「介護業界のこのへんを削れ」と言ってくる。でも、どうしてあなたたちが言うんだって思うんですよ。だって、介護の問題をわかっているのは、究極的には介護を受けているおじいちゃんおばあちゃんだし、汗かいてやっている現場職員だし。そんなん、僕たち本部がわかるわけがない。僕らがわからないことを財務省がわかるわけがない。なんでわからん人間が決めているんだ、という憤りです。
今の社会保障改革は、ルールで人を変えようとしている。本当は人がルールを変えないといけない。その「ルールを変える人」は、現場にいる人のことです。じゃぁ、僕たちはなにをするべきか。当然、現場の人の声をきちんと聞いて、伝えていくことです。それが僕たちの仕事なんです。

【岡】現場の声って絶えず変わりますよね。それをどうやってアップデートしていくか。

【天野】やっぱり年がら年中、人に会うことですよ。

【岡】全国老施協の会員さんであるなしにかかわらず、いろんな人に?

【天野】そりゃあ、僕らを悪く言っている人たちにも会いに行くし、介護に全く興味のない人にも会わないといけない。会える人に会って、自分が今どこにいるのかを理解している状態を保つ努力をしなきゃいけない。

【岡】どういう名目で会いに行くんですか?

【天野】飲みに行こうよって(笑)。

【岡】もう僕もそこに就職しようかな(笑)。

人と人が話せば、責任のありかは隠れない

【岡】いやでも、僕のすごく好きなスタイルですね。人と人とのコミュニケーションのなかで物事が変わっていく。その変わっていく空気も自分の肌で感じて、さらに自分も絶えず変わっている。

【天野】これってね、責任・覚悟の問題なんですよ。組織の一番悪いところって、人が集まって、いつの間にかちょっとずつ物事が入り込んできて、いざ出来上がって……それが誰からの発信か、誰に責任があるのかわからないことなんです。誰が誰のためにやったのか、誰もわからない。わからないから誰も責任をとれない。結局、組織で決まったことだから、組織のせいにしておしまい。それって、共同無責任じゃないですか。そんなのだめ。

【岡】なるほど。

【天野】少なくとも、自分が責任とるわって言える範囲じゃないと、やっちゃいけない。だから、人間同士の考え方で、人と人をつなげていかないといけません。そういう組織をつくっていきたいんですよ。そうすれば、責任のある言葉を出せるし、会員の施設や職員のみなさんに対する恩返しにもなる。

「僕たちは伝書鳩」全国老施協は使わなきゃ意味がない

【岡】そんな全国老施協にはどのくらいの会員がいるんですか?

【天野】全国60都市に老施協があって、全国老施協はそれらと連携しながらやっています。各地の社会福祉法人や施設、事業所、企業などを合わせると12000くらいです。老施協は基本的には役員さんたちが物事を決める集まりで、僕たちはそれをサポートしたり、決まったことを進めたりするわけです。

【岡】老施協に入ると何が起こるんですか?

【天野】入ると僕たちががんばります!

【岡】いや、あの(笑)。

【天野】研修のご案内が届いたり、それに安く参加できたり、国の資料が回ったり、それに対する僕たちの見解が月刊誌として届いたり。かっこいいことをいえば、団体自体のメリットはありません。研修はどこででもやっているし、情報はインターネットにも出ている。じゃぁ、老施協のメリットって何?それは、使わないとメリットがないということなんです。例えば、世の中に何か気に入らないことがあれば、全国老施協を使って、変える努力をするとか、そういう窓口にはなるはずです。会員のみなさんの主体的な努力があれば、本当にメリットが出てきます。でも、世の中が変わっていくのをじっと見ているような人には、メリットはないでしょうね。

【岡】声をあげてもらえれば、一緒に行くぞということですね。

【天野】そうです。僕らも言ってもらえないとわかりようがないですからね。研修を開いたら、「私はこれが気に入らんのですよ」って施設の方に言ってもらう。それで、さぁ、誰に話そうか、という。

【岡】天野さん、それってフィクサーじゃないですか。

【天野】伝書鳩ですよ。ちょっとでかくて最近飛べないんですけど(笑)。

【岡】おもしろいですね(笑)。天野さんのギャップが。

微笑む天野さん

世の中に「世の中を変える担当」はいない

【天野】この業界は、「だれだれが何もやらない」とか「だれだれがやってくれない」とか、そんな話ばっかり。世の中を変えるのって、だれもができるんですよ。そんなことは誰かがやることだ、ということではないんです。僕は僕の立場でベストを尽くせばいいだけだし、施設で働いている人たちは、その立場で介護のためにベストを尽くせばいいだけのこと。全員がベストを尽くせば、おのずと物事は変わると思う。世の中に「世の中を変える担当」はいないんですよ。

【岡】確かにそうですよね。

【天野】誰かがっていうバカなことは信じないで、みんなで変えるんだっていうこと。このごろ、それが見えにくくなっているのではないですか。 そういえば、政治をみると、若い人の声が最近活発になってきていますよね。ああいう感じで、介護業界も「誰かが」ではなく「自分が」という空気になってほしい。
とはいえ、やたらめったら騒いで声をあげるのも違うと思います。やはり自分の本分でやらなければいけません。僕が事務局長以外のところでどれだけ騒いでも意味がない。自分の立ち位置で努力をすることが欠かせません。それぞれの立ち位置で介護に関わるすべての人がベストを尽くせば、厚労省も人間ですから、想いが届かないわけがない。
厚労省だって別に悪人ではないんです。彼らだって必死に自分の立場で一生懸命やっています。介護の報酬を下げるといっても、いじわるしたくて下げているわけではないですよね。誰かがそれが正しいという判断をして、誰かがそうしなければいけないという決意をもってやっています。誰かの正義がある。それに対しては、自分たちも自分たちの正義をきちんと説明してわからせる努力をしなければなりません。それをせずに陰でぐちぐちいうのはやめなさいと言いたい。一歩あるいてから言いなさい、と。その代わり、一歩あるいて僕たちと何か一緒にやろうという人には、できる限りのお手伝いをします。

【岡】もうLOVE&PEACEと男塾、そんなキーワードが浮かんできます!人間同士の誠実な対話を重んじるポリシーがとても伝わってきました。

【天野】今後も、現場はもちろん、あらゆるところにアンテナを張り、何がおもしろいか、何をすべきかを常に求めて、いろんな人の声を聞いていきます。そこには当然いろんな人がいます。その人ごとの立場で、その人ごとの正義で、その人ごとのタイミングで僕たちに言うわけですよ。それに対して、バランス感をもって全員に等距離で接して、いろんな声を公平に判断してものごとを変えていけるように目指していきたいですね。

自分の人生でどれだけベストを尽くせるか、あなた次第!

【岡】このインタビューは一般の人も多く読んでくれます。20〜30代の若い人、介護とは関係のない仕事をしていて、介護を意識していない人に対してメッセージをお願いします。

【天野】英語でいえば、“It’s up to you”(あなた次第)です。僕は僕でがんばります、みなさんはみなさんでやってください。人間っておもしろいんです。だから、いっぱい人に会うといいでしょう。一回しかない人生でこんなに違う生まれ方生き方がある。めいっぱい見て聞いて体験しないと損だと思います。人の生き方は変えられないので、自分の人生でどれだけベストを尽くせるか、おもしろがれるか。そんなことを若い皆さんに伝えたいです。

天野さんと握手

編集者からの一言
いかがでしたか?全国数万の介護施設を会員に束ねる全国組織の事務局長がこんなにもLOVE & PEACEだとは知りませんでした!それでいて男塾的な勢いも併せ持つイノシシみたいな人です。
世の中に「世の中変える担当」なんていませんから!
まさにこれ!みんなが動く!!

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寄稿者

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岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)

介護のほんねニュース初代編集長。1981年 東京生まれ。3歳〜11歳までアメリカ・カリフォルニア州で生活。27歳で高齢者介護と障がい者支援の仕事を始め、29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立。近年は厚生労働省 介護人材確保地域戦略会議の有識者やNHK出演など多岐に渡る活動を展開中。(http://ubdobe.jp)