建築資材レンタル会社が作った、ラップ式トイレ『ラップポン』インタビュー

インタビュー , 災害 , ラップポン , ポータブルトイレ
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2014.12.01
ラップポンの開発が始まった経緯、改良の歴史、使いやすく進化した介護用モデル「エブリ」について事業部長の佐久間さんと広報担当の杉森さんに伺いました! ラップポンインタビュー ―日本セイフティー株式会社ラップポン事業部事業部長佐久間さん、広報担当杉森さん

建設現場の資材レンタルの会社が、介護用トイレを作ったワケ

【中浜】『ラップポン』の日本セイフティー株式会社ということで、どういう会社さんですか?

【佐久間】日本セイフティーという会社は仮設資材のレンタル・製造・販売がメインの会社です。工事現場で真っ白い仮囲いがあると思うんですが、今あそこにマンションの宣伝とかいろんな広告貼ってありますよね?あれを考えたのが当社の会長の西田(※ 西田弘 氏)なんです。
仮囲い以外には(建設現場で)作業員の方が休む仮設のハウスなど、仮設資材にかかわるものは全般的に貸し出しています。
レンタルで、実はトイレもやってるんですよ。

【中浜】工事現場で使う、トイレ。

【佐久間】はい、で、そこから『ラップポン』つながるんですけども。
特殊な工事現場で使うトイレは、ずっと苦慮していました。衛生面でも、使用勝手も。そういう時にこの『ラップポン』の原型となるトイレが活躍したんですよ。
それは海外製だったんですが、会長が見て「これは介護用に良いだろう」と言って。うちの会長のご自宅にご高齢のお母さんがいらっしゃって、すごく排泄のケアが大変で「どうにかできないんだろうか?」と思っていた時、工事現場用の特殊なトイレを見て、「これだ」と。これを改良したら介護用にできるぞと。

【中浜】もともとは会長さんのお母さんへの想い。

【佐久間】“想い”ですね。介護への想いから。

立て続けに起きた震災。それを通じてまずは災害用として完成していく

【中浜】会長さんの気づきから第一号の製造までどれくらいかかったんですか?

【佐久間】3年ぐらいですね。もともと製造業に不慣れな会社がやっているので、初号機はすごく大変だったんです。(介護用としては)コストダウンも念頭に置く必要があり。
苦労してる最中に、能登半島の地震が起きたんです。お年寄りがトイレがなくて困っている。水も止まっている。ならば『ラップポン』を活用してもらうべきだとなって石川県庁などいろいろなところに電話したんですが、混乱しているさなかで・・・。諦めずに交渉を続けていたら(県庁が)「試しに持ってきてください」と言ってくれたんです。能登半島ではすごい人気でした。『ラップポン』って名前はあんまり覚えてもらえなかったんですけど、「ハイテクトイレ」と呼ばれて人気が出て。

でも当時重さが40kgあったんですよ。移動は大変、備蓄もできない。「災害用にここを改良してくれないかな?」という声からトレッカー1号(後継機種)生まれたんです。

【中浜】地震があって、それで改良したわけですね。

【佐久間】介護用だったら「値段を安く」という話がメインで、災害の現場だと「備蓄性」「緊急性」「移動性」。2007年に能登地震と中越沖地震があって、その間の中越地震は間に合わなかったんですけど、2008年にトレッカー1号を発表して。トレッカー1号は2011年の東日本大震災で活躍して、「これ(充電)バッテリーだったらもっと便利だよね」という声があって、バッテリーを使えるようにして2011年の暮れに発売。その間災害が多かったので、介護用はストップしちゃったんです。

震災の時にラップポンで助かった命

【中浜】震災の時は、衛生管理も問題になっていましたよね。

【佐久間】3.11の時、お医者さんが認めてくれました。
石巻の避難所でお医者様に出会って「何が起こったのですか?」と言ったら、その時点で(震災から)3週間くらい経ってたのかな、もう感染症とか出ちゃってて。なぜ出るのか?要はここは使っちゃいけないというトイレをみんな使っちゃうわけです。
それで感染症を防止するには手洗いと『ラップポン』しかないと言われて。

【中浜】それでたぶん、助かった方というか。

【佐久間】そうですね、お年寄りのみなさん特に。私たちだったら「あそこにある」というトイレまで行けなかったり、行ったはいいけど仮設トイレって段差になってるじゃないですか?これが上がれなかったり。和式だと足腰悪い方ってしゃがめないですよね。そういうのが嫌だから、倒壊寸前のおうちに帰ってまでしてるという人もいたんですよ。
だからやっぱり誰が一番喜んでくれたって、ご高齢者だったり、小さいお子さん、妊婦さん、障害を持った方。そういうみなさんが「本当に助かった、こんないいものがあって。」と言ってくれて、それが一番やりがいがありました。

家庭の介護で役立つものへ

【中浜】改めて介護のほうに今、動きだしていると。

【杉森】2012年の11月に、(写真の「エブリ」の前身にあたる)「キュート」という介護用を出しました。「キュート」から方式が変わって、カセットタイプです。トレッカー(災害用)のほうはお年寄りの方がフィルムを逆向きにつけちゃったり、機械にひっかけちゃったりいろいろあったものですから、ポンと置いていただく形になりました。 ラップポンインタビュー 【中浜】でも、コストを下げなきゃいけないところで、これはコストアップになりそうな感じが。

【佐久間】実際コストアップです(笑)。ただ、どこが違うかと言うと、災害用は特殊な防臭フィルムを使っているんです。災害の時はゴミの回収が1か月単位とかで、感染症の感染源も漏らしちゃいけない。介護用は一層構造なんです。なので防臭効果は1週間ぐらいですね、そのかわり1週間以内に捨ててくださいということで。家庭であればだいたい1週間に1回や2回は捨てますよね。なのでその分フィルムの値段を安くしたのでなんとかなっているかなと。

【杉森】「キュート」は17万円だったんです。フィルムも特殊な防臭性能のままで。
2013年11月に「エブリ」という商品をやっとの思いで9万2千円まで下げてだしました。

【中浜】すごい下がりましたね。

【佐久間】がんばりました。製造工程を見直したり、「エブリ」は家庭用で使う前提で、災害用の機能を捨てようということでシンプルになっているので、なんとか介護保険で1万円以下で買っていただきたく。
※介護保険制度の適用で購入者は1割負担となる

できることを自分でできる、自信につながるトイレ

【佐久間】目指しているのは、使うすべての人たちに感動を与える商品でありたい、というコンセプトです。まだオムツをするには早いという方が、「隣のトイレならいける」という自信になる。人手も不足していく中で自力でやることを助けられる。日本みたいに技術力が高くて、トイレやお年寄りに対する想いが強い国だからこそ生み出せる商品だと思っているんです。日本国内でももちろん活躍してもらいたいですし、日本人ならではの想いを海外に展開していきたいのもあります。

【中浜】たぶんこれで、老老介護の人など本当に助かると思いますよね。

【佐久間】助かりますよね。インタビューに行かせてもらうと、使っているおばあちゃんたち自身が元気に「『ラップポン』使ってこんなに良かった」って話をしてくれるので、それが本当に一番うれしいです。

デモンストレーション

【杉森】フタを開けていただくと、便座が付いています。 ラップポンインタビュー 【杉森】フィルムカセット(1セット60回分)をセットすれば、60回分の袋ができるまではフィルムの交換は必要ありません。 ラップポンインタビュー 【杉森】カタメルサーという凝固剤を一杯入れていただいて、排せつしていただくと、凝固剤が吸っていきます。 ラップポンインタビュー 【杉森】トイレットペーパーなどを全部いれていただいて、1回ボタンを押すと全部中に入ります。これで2分くらいして圧着していますので、その間に支度していただいたり。 ラップポンインタビュー 【杉森】落ちたらトレイを引いていただくと出てきますので、それを捨てていただくだけです。 ラップポンインタビュー 密着されてにおいが漏れない

あらゆるシーンで使われるラップポンを目指したい

【中浜】ラップポンとしてどういうところに発展していきたいですか?

【佐久間】やっと念願の10万円以下の介護用品ができたので、みなさんにもっと知っていただきたいです。で、たくさん使っていただければ、「こうなったらいいのに」や「こうなりませんか?」という意見にも対応できると思います。
まずは、会長の想いで始まった介護の業界で正しく普及すること。ゆとりが生まれる介護用品になること。
レジャー用やアウトドアでも、みなさんの生活に密着して、みなさんが必要だって言ってくれるものをご提供していきたいと思います。

【中浜】介護から出発して、誰でも使えるようにですね。

【佐久間】マークを見ただけでも『ラップポン』ってわかってもらえるようになるのが一つの目標なんです。移動車や福祉車両でも、このマークがついているだけで「あの車は『ラップポン』を搭載しているんだな」「あのトイレがついてるから臭わないしラクだな」と思ってもらえるように。車もそうですが、いろんな企業とコラボしたりして、「『ラップポン』、入ってる」を目指したいです。 ラップポンロゴ 介護の経験から必要な製品を考えたところから、災害でこんなにも多くの方の役に立つものになったことが介護の現場で感じることが社会にとって大きな財産になるのだと感じました。
災害時のトイレの問題は食事面よりあまり表立って出てきませんが、感染症等の二次的な部分にとってはとても大切であることを多くの方に知っていただきたいと思います。(中浜)
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中浜 崇之

二代目編集長。介護福祉士、ケアマネジャー。2014年に世田谷デイハウスイデア北烏山を立ち上げる。2010年より「介護を文化に」をテーマに介護ラボしゅうを立ち上げ運営中。(http://kaigolabo-shuu.jimdo.com/